世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルスによるパンデミックが続くなか、ウイルスの発生源として疑われている「ウェットマーケット」に対し、取引を禁止すべきだとする声明を発表しました。
ウェットマーケットは、野菜や果物のほかに生きた野生の動物やその肉などを販売している市場のことで、この名前は、周囲が水や解体の際に流れる血などで濡れて(WET)いることからきています。
確定はしていないものの、新型コロナウイルスは、中国武漢の野生動物が取引されている市場で発生したものと考えられています。
ウェットマーケットは新しいウイルスの温床になる可能性がある
WHOのテドロス・アダノム事務局長は17日に行った発表のなかで、ウェットマーケットに対し、「これらの市場は、厳しい食品安全と衛生基準に適合した場合にのみ再開されるべきである」とし、それまでの間は、政府が野生動物の販売や取引を厳格に禁止する必要があると述べました。
さらに「新しいウイルスの70%は動物由来であると考えられる」と説明したうえで、WHOは世界動物保健機関(OIE)や国連食糧農業機関(FAO)などの国際機関と協力しながら、病原体を理解し、動物からヒトへの感染を防ぐことに努めていると強調しました。
WHOは現在、ウェットマーケットを安全に運営するためのガイダンスの策定に取り組んでいます。
野生動物を取り扱うウェットマーケットに対しては批判の声があります。
イギリスの動物保護団体ボーン・フリー財団(Born Free Foundation)のマーク・ジョーンズ(Mark Jones)博士は、WHOは政府に働きかけを行うべきだとしたうえで、「野生動物の取引の禁止は、自然界と絶滅の危機に瀕している100万の種の壊滅的な衰退を食い止めるために必要である」と話しています。
一方で、ウェットマーケットは現地の人たちの食と経済に密接に関わっているとして、閉鎖については慎重な見方をする専門家もいます。
英国オックスフォード大学の動物学者であるダン・チャレンダー(Dan Challender)氏は、全ての野生動物の取引を禁止してしまおうというのは、「ワンパターンな反応であり自滅を招くおそれがある」と述べ、より適切な対応は、公衆衛生と動物福祉に関する懸念を十分に考慮しながら、生きている動物を扱う市場の規制を改善することだと強調しています。
新型ウイルスの発生源とされる中国武漢の市場は、厳密にはウェットマーケットではありませんが、ヘビやヤマアラシ、シカといった野生動物が売られていたという報告があります。
世界には野生動物を売って生計を立てている人も多いと聞く……
その土地の伝統や文化とも関わってるから難しい問題だね
References: BBC