日常の食事では足りないビタミンなどの成分を気軽に摂取できるという点でサプリメントは高い人気があります。
ほとんどの製品は効能を示す魅力的な謳い文句と共に所狭しと棚に並べられています。
しかし多くの研究は、サプリメントが通常の食事と比べあまり利点がないことを明らかにしています。
サプリメントが食事による栄養素の摂取よりも有益であるという結果は見出せない
2018年にJournal of the American College of Cardiology誌に掲載された研究によると、マルチビタミン、ビタミンC、ビタミンD、カルシウムのサプリメントは、心血管疾患、心臓発作や脳卒中の予防に有益ではないことが示されています。
この研究の主執筆者であるDavid Jenkins博士は、「これらのサプリメントを使用したいなら問題はありませんが、明らかな利点もありません」と述べています。
サプリメントが人の健康に寄与しないという研究は他にもあります。
2019年4月にAnnals of Internal Medicine誌に発表された別の研究は、栄養補助食品を摂取しても同じ成分を食事から摂取するのに比べて健康や長寿に影響を及ぼさないことを示しています。
米国タフツ大学の疫学准教授であるFang Fang Zhang氏は、一般の人が栄養補助食品を摂取する必要はないと語ります。
ますます多くの証拠がそれを示しているので、私たちはサプリメントに頼るのではなくむしろ食物から十分な栄養を摂取するようにすべきです。
さらに2017年に行われた50歳以上の成人5万人を対象にした別の研究もサプリメントの有効性について大きな疑問を投げかけています。
そこでは特にカルシウムとビタミンDについての調査が行われましたが、研究者たちはそれらを摂取した人とそうでない人とを比較して健康上の違いが全くなかったことを見出しています。
それだけではなく一部のグループにおいては、ビタミンDの摂取が股関節骨折のリスクと関連していたことも発見されました。
この研究の著者は「サプリメントの日常的な使用が高齢者においてその効能を裏付けるものではない」と書いています。
ここまで多くの否定的な研究結果を見ると気軽にサプリメントを買うのをためらってしまいます。
では私たちは健康のために何をしたらいいのでしょうか。
サプリメントの代わりに栄養のあるよい食事をとる
研究者たちは、サプリメントの栄養素は実際の食事から得るものよりもはるかに効率が悪く体内で吸収されないため、それらに頼ることは栄養不足につながる可能性があることを指摘します。
これはサプリメントが“悪い”のではなく、利用する人の貧弱な食生活が問題の根底にあることを示しています。
そしてサプリメントの価格を考えるならば、それを毎日摂取するよりも栄養のある食事に費用をかけるべきです。
調査によるとアメリカのサプリメント業界は年間で370億ドルをこえる市場価値があり、それにはほとんど規制がありません。
(日本では2017年度の市場規模が約1兆5000億円強というデータがあります)
パッケージに表示されている成分や内容量が安全で正確であるということを消費者は確認できません。
2013年にアメリカで行われた調査では、同じパッケージの中でさえその成分量に違いがあるという結果が出ています。
これらの研究結果をふまえると、サプリメントに頼る生活を続けるかわりに日常生活――特に食生活について一度見直すことのほうがはるかに有益であることがわかります。
研究者はサプリメントの全てが無意味であると結論づけているわけではありません。
人間の健康状態には個人差があります。
自らの貧弱な食生活の言い訳にサプリメントを摂取するのではなく、医師とよく相談し適切なものを取り入れることが何より重要です。
サプリメントは手軽なだけに頼ってしまいがちですが、健康のことを考えるのであれば栄養のある食品を買うことも検討すべきかもしれません。
References:mnn