吸血鬼は若い者の血を好み、それが永遠の命の源になっています。
吸血鬼は想像上の生き物ですが、人は若い者の持つエネルギーの象徴としてその血を連想することがあります。
フィクションの中での出来事ならばちょっとした話題ですむのですが、アメリカには実際に若者の血を使い健康を促進することを謳う業者が存在します。
数年前からみられるようになったこうしたサービスについて国の機関が注意を促しています。
若者の血に治療効果はない
FDA(アメリカ食品医薬品局)は年齢に関連した病気に対して効果があるとして若者からの血漿注入をする業者が存在していることを報告し、警戒するように呼びかけました。
またそうした”治療法”には何ら医学的根拠がなく潜在的に重大な危険性があるとして警告しています。
FDAによると、若い人の血漿を注入する業者はそれが強さと記憶の改善に役立つと主張しています。
さらにはアルツハイマー病やアンチエイジングに対して有効であることさえ宣伝しているといいます。
そしてこれらの業者が治療の代価として数千ドルを要求していると報告し警戒を呼びかけました。
FDAのコミッショナーであるScott Gottlieb博士とFDAの部長であるPeter Marks氏は次のように述べます。
彼らはこのような治療法を宣伝しているが医学的な根拠はなく潜在的に有害です。また適切な治験からの証拠に裏付けられていないこの方法に対して数千ドルを請求したという報告もあります。
血漿の輸血は身体的な外傷や血液が凝固するのを妨げる特定の病気や症状を持った人に対しては救命となります。
しかしFDAは加齢に伴う病気や治療のための血漿輸血を承認していません。
血漿の大量投与は感染症やアレルギー反応、呼吸および心血管障害などの重大なリスクと関連しているという報告もあります。
Gottlieb氏とMarks氏は、臨床試験以外でこの治療法を受けるのは推奨できないと語りました。
新しい治療法について必ず専門家に意見を求める
この分野では過去2年間で多くの新興企業が名乗りを上げていて、若者の血液の輸血に際し多額の請求をしている実情があります。
最も有名な会社であるAmbrosiaは今回のFDAの発表の後すぐに閉鎖されたようです。
Ambrosiaの創設者であるJesse Karmazin氏は――専門家の多くが否定していたにも関わらず――治療を受けた者がより強く感じ、記憶力が向上したと主張していました。
FDAの発表を受けたAmbrosiaは、今後の患者の受け入れを中止した、とウェブサイトに掲載しました。
Karmazin氏は各メディアからの質問には応じていないということです。
FDAによると、まだ承認されていないが臨床試験中のものについては、IND(Investigational New Drug)申請と呼ばれるものをFDAに提出している必要があります。
もし消費者が新たな治療法について検討しているのならば、医師に相談するか、FDAにアクセスしてIND申請がなされているかを確認するように注意を呼び掛けています。
誰しも健康と若さを手に入れたがりますが、そうそううまい話はありませんね。
幸い人間は吸血鬼と違い血を飲まなくても生きてはいけます。
まずは自分の身体をいたわり、適切な治療を受けるよう医師と相談するのが賢明な選択といえるのかもしれません。
References,TheGuardian,LiveScience