独創的なアイデアの多くは年齢が若いときに発生することが多いため、人間の創造性(クリエイティビティ)は年をとるにつれて発揮できなくなる、という考え方が一般的です。
新しく何かを生み出せるのが若者だけの特権だと仮定した場合、人の人生の中盤から後半は非常に味気ないものになります。
新しい研究によると創造性には2つのピークの時期があります。
人間はたとえ年をとっていても、その創造性の火が燃え尽きることはありません。
創造性は若者だけの特権ではなく、人生の中盤からでも発揮できる
オハイオ州立大学とシカゴ大学の研究グループは、ノーベル賞を受賞した経済学者31人の経歴を使い、人間の創造性には2つのピークの時期があることを発見しました。
経済学の学術誌De Economistに掲載された研究は、20代半ばで最高の仕事をする傾向のある人を「概念的な革新者」、50代半ばで最高の仕事をする人を「実験的な革新者」であるとしています。
研究著者の一人であるオハイオ州立大学のブルース・ワインバーグ氏は、「この研究で発見したことは、経済学に限らず一般的な創造性に適用できる」と話しています。
研究では31人のノーベル賞受賞者の仕事のうち、それが最も熟していた期間についてリスト化していきました。
また彼らの仕事のアプローチの仕方も分類しました。
例えば概念的な経済学者は、その論文の中に「仮定」や「証明」、「方程式」などを多用する傾向にあり、数学的な付録や論文を引用します。
一方実験的な経済学者は、事実からの直接推論に依存し、その論文は「場所」や「期間」、「産業」そして「商品」といった、具体的な項目への参照が目立つ傾向にありました。
さらに研究グループは、経済学者たちが記した論文を他の研究者が引用する時期を特定し、その回数が増えていくことを仕事の成果としました。
通常、論文の引用回数が多くなるほどその影響力は大きくなります。
これらの調査により、ノーベル賞受賞者の仕事のピークの時期は大きく2つに分けられることが明らかになりました。
概念的なアプローチを多用していた受賞者は、25歳から29歳の間に仕事のピークを迎えていました。
そして実験的なアプローチを多用していた受賞者の仕事のピークは、57歳、または50代半ばでした。
概念的な考え方は、周りの常識にとらわれず独自の方法で新しいものを生み出すことができます。
このアプローチが若い人に見られる傾向であることは、誰もが自身の経験から理解しています。
そのため、芸術や科学のような分野で大きな仕事を成し遂げるためには、年齢が若くなければならないといった思い込みが存在しています。
しかし研究結果は、若い時だけでなく、年をとってからでもアプローチの仕方を変えることで創造性を発揮できることを示しました。
ワインバーグ氏は「多くの人は創造性が若い時代にのみ間連していると信じているが、創造性には種類がある」と述べ、創造性は、人々が行う仕事にどのようにアプローチするかに関わっていると結論づけています。
これまでに蓄積してきた知識や経験を生かすことのできる実験的なアプローチは、年齢を問わず、全ての人に創造性を発揮する機会を与えてくれます。
人々の記憶や歴史に残るような芸術家や文学者、そして科学的な功績を残した人物たちの年齢は実に多岐にわたっています。
例え自分に何かを創造する能力がないと感じていても、目標や目的に対する考え方を変えることで、才能が一気に開花する可能性があります。
人はどんな年齢であっても、何かをするのに遅すぎることはありません。
若い時のあふれ出る創造性が枯れてしまったことを嘆く人は多い
年をとってもアプローチの仕方を変えることでこれまでの経験を生かせるんだね
想像力と妄想力なら負けないんだが……
References: Ohio State University