酩酊、二日酔い、ハングザイエティー……アルコール摂取がもたらす影響について知っておくべきこと

雑ネタ
(Matthieu Joannon/Unsplash)

ホリデーシーズンには多くの飲酒の機会が訪れます。

お酒は楽しいものですが、体にとっては必ずしもよいことばかりではありません。

二日酔いや翌朝の強烈な不安感などの症状は、れっきとした体からの警告信号であり、無視するならば取り返しのつかない事態を招き入れることになりかねません。

 

オーストラリアのカーティン大学の国立薬物研究所の教授ニコール・リー氏と、英国ニューカッスル大学の研究アシスタント、ブリギッド・クランシー氏は、飲酒によるアルコール摂取が体に及ぼす影響について報告しています。

アルコールや、飲酒にまつわる行動については多くの誤解が存在しています。

アルコールと飲酒について知ることは、楽しい夜を過ごすことにつながるだけでなく、体と心を健康に保つことにも貢献します。

 

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アルコールが体に入るとどうなりますか

 

アルコールを飲むとそれはすぐに胃と小腸に向かいます。

そして血流に吸収され全身にアルコールが拡散していきます。

お酒と一緒に何かを食べる場合、アルコールが体に吸収される速度は低下しますが、重要なのはアルコールの量であり、その味や銘柄、生産方法などは吸収率には全く影響を及ぼしません。

人によっては、「特定のお酒が酔い易い、または酔いにくい」といった感覚を持ちます。

しかしこれは人のアルコールの分解速度がそれぞれ異なるためであり、そのお酒が他のお酒と比べて特別だからではありません。

 

アルコール10gを代謝するのに必要な時間は(個人差はありますが)約1時間です。

水で薄めたり他のお酒と混ぜたりしても、重要なのはアルコールの総量です。

飲んでいるお酒のアルコール量は、そのまま回復に必要な時間を示す指標になります。

 

お酒を飲むと起こる酩酊状態

 

Photo: Michael Discenza/Unsplash

 

飲みすぎた場合に起こるのが「酩酊(めいてい)」です。

広義では酔いが体に回ることを意味します。

酩酊状態になると意識がなくなり、自分が何をしたのかまったく思い出せなくなることがあります。

この酩酊は、「飲酒量と飲む速度」に関係しています。

より多く飲み、より早く飲む場合、酩酊を経験する可能性が高くなります。

 

血液中のアルコールが一定のレベルを超えると、脳は新しい記憶の形成をストップします。

そのため、飲酒をしていた時間に自分が何をしていたのかを思い出すことができなくなります。

 

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酔いすぎからの回復に必要なのは「時間」だけ

 

飲みすぎた場合の気分の悪さはどうすれば回復できるでしょうか。

(残念なことに)飲みすぎたことで起きる体の不調を回復させることのできる有効な手段は、たった一つしかありません。

それは「時間」です。

前述したように、アルコール10gを代謝させるのには約1時間がかかります。

酔いすぎたと感じた場合、コーヒーを飲んで紛らわそうとする人もいます。

しかしカフェインも、酔っている気分を紛らわすことはできても、体内のアルコール量を減らすことはできません。

同じように冷たいシャワー、運動、汗をかくこと、新鮮な空気を吸うこと、水を飲むことなども――気分が良くなるかもしれませんが――血中のアルコール濃度にはまったく影響を及ぼしません。

 

二日酔いを引き起こす要因

 

誰もが一度は経験したことのある、飲みすぎた場合の翌日に発生する「二日酔い」はどうして起こるのでしょう。

研究者は明確な二日酔いの原因を特定していません。

しかしいくつか考えられる原因があります。

 

アルコールには利尿作用があるため、飲酒量が増えると頻繁に排尿することになり、これが脱水症状を引き起こします。

これは特に暑い場所や体を動かす場所での飲酒に当てはまり、めまいや眠気、無気力といった感覚を誘発します。

さらにアルコールは胃の内壁を刺激することで、嘔吐や下痢、電解質の不均衡といった症状をもたらします。

電解質(体が適切に機能するために必要なミネラル)の不均衡は、疲労感、吐き気、筋肉の衰弱やけいれんにつながります。

 

アルコールを大量に摂取することで起こる弊害はこれだけではありません。

アルコールは血管を拡張させることで頭痛の原因になり、またグルコース(ブドウ糖)の生産を防ぐことで低血糖をもたらし、体の動きを鈍らせ弱くします。

そしてアルコールは睡眠のリズムも狂わせ、夜中に目覚める原因をつくり、いつも通りの起床を難しくさせます。

二日酔いは、脱水症状や血管の拡張による体の変調、そして睡眠リズムの変化によって発生します。

 

 

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「迎え酒」は二日酔いの解決策にはならない

 

Photo: Giovanna Gomes/Unsplash

 

日本には「迎え酒」という、二日酔いを軽減させるために朝に酒を飲むという風習があります。

これは世界でも見られる風習で、多くの人が、朝に酒を飲むことを二日酔いに対する有効な手段であると考えています。

しかしこれは二日酔いの症状を先延ばしにするだけです。

朝に酒を飲むことで一時的に気分がよくなりますが、昨夜の激しい飲酒で蓄積された体内のアルコールを減らすことはできません。

 

迎え酒は、体の中にさらなるアルコールを継ぎ足す行為です。

もし二日酔いの解決策として「迎え酒」を考えている人は、アルコール依存症の可能性があります。

 

ハングザイエティー(酩酊後の不安状態)はなぜ起こる?

 

ここ最近「ハングザイエティー(hangxiety)」なる造語が、欧米の飲酒に関するトピックに登場するようになっています。

これは二日酔いと不安症状を足した状態を表す造語で、「酩酊後の不安」とでもいうべき状態のことを指します。

パーティーや集まりで飲みすぎた後帰宅し床についたものの、翌朝になって強烈な不安に襲われる、というハングザイエティーは、日常の行動を狂わせ、飲酒を後悔し続けたり他人との関係を難しくしたりするといった問題を引き起こします。

ハングザイエティーが起こる背景には、脳内にあるGABAと呼ばれる化学物質の産生がアルコールによって刺激されることが関係しています。

GABAは脳を落ち着かせる機能があり、不安に関連する物質が作られるのをブロックすることができます。

これはお酒を飲むことがハッピーな感情につながっていることの証拠です。

しかし飲むのをやめた場合、GABAの生産は落ち着くことになり、日常の気分が戻ってきます。

元々不安に対して耐性のない人の場合、この感情の揺り戻しが、ハングザイエティー、すなわち酩酊後の不安を引き起こすきっかけになります。

この不安症状に対処するには、飲酒をやめるだけでは難しい場合もあり、専門的な治療を受けたり主治医と相談するなどといった行動が必要になります。

マインドフルネスなどの心を落ち着かせる呼吸法も一定の効果をもたらします。

しかし日常的に不安を感じる傾向のある人は、アルコールを飲むことをやめるか控えるようにした方が賢明です。

 


 

アルコールに関する真実や誤解について報告したニコール・リー教授たちのチームは、「予防は治療よりも優れている」と指摘しています。

ホリデーシーズンには飲酒の誘惑がつきものであり、また人はその誘いに容易に乗ってしまう傾向があります。

教授はそれぞれの国が推奨している一週間のアルコール摂取量を記録し、自分のスケジュールに当てはめることを提案しています。

日本の厚生労働省は、一日のアルコール摂取量の上限を20gとしています。

最近の飲みすぎによって既にアルコールを過剰に摂取している場合、新たに飲むのは避けるようにするか、量を減らすことを検討するべきです。

またどうしても飲まざるを得ない場合は、何かを口にしながら(食べながら)飲んだほうが良いでしょう。

そうすることで、アルコールが体に吸収される速度を遅くすることができます。

 


 

 

せつな
せつな

年末年始、飲み会、宴会、パーティー……アルコールの誘惑が尽きることはない……

ふうか
ふうか

調子にのって飲みすぎるのは体に毒ということだな

しぐれ
しぐれ

何事もほどほどなのが一番だね~

 

References: The Conversation