大勢の人が集まる場所には、目に見えない厄介なウイルスが存在しています。
ウイルスは脆弱なターゲットを探しながら、隙あらば体内に入り込もうと躍起になっています。
これらのウイルスから身を守るには、マスクや消毒のほか、特に手洗いがシンプルかつ効果的です。
とはいえ、衛生観念は千差万別で、なかにはトイレを使用した後でさえ手を洗わない人もいます。
新しい研究によると、空港のトイレの使用者のうち30%が手を洗いません。
空港と航空機はその性質上、ウイルスが他の地域に伝播しやすく、それがときにパンデミックにまで発展することがあります。
空港での手洗い率を上昇させることができれば、公衆衛生に対するリスクを低減することができます。
病気を世界中に広げる空港と航空機
キプロス大学およびマサチューセッツ工科大学の物理学者である、クリストス・ニコライデス氏たちの研究チームは、過去に起きたパンデミックを調査し、ウイルスがどのような経路で伝播していくのかを分類しました。
14世紀の黒死病(ペスト)から、2003年に発生したSARS、そして2009年にメキシコで最初の被害が確認された新型インフルエンザH1N1に至るまで、これまでに多くの病気が世界中に広まりましたが、その広がり方とかかった時間は時代によって大きく異なります。
たとえば14世紀は現代と比べて医療が未発達であり、それが死者の増大につながりました。
一方この時代は、現代のような交通手段もありませんでした。
これは致命的なウイルスであっても、その広がりが抑えられ、病気の蔓延するスピードが遅くなることを意味します。
では現代はどうでしょうか。
車、列車、船、そして航空機――これらは地球を狭くし、人間を短期間であらゆる場所に運んでいます。
なかでも航空機の需要は右肩上がりであり、国際民間航空機関(ICAO)は、空港利用者の数が2036年には78億人にまで達すると予想しています。
研究では、空港がウイルスを運ぶ中継地点として機能していることが示されました。
空港内のトイレやタッチパネル、ドアのほか、機内の座席やトレイなど、多くの箇所には微生物が付着しています。
これらに触れた人が手を洗わない場合、それは到着地に持ち込まれることになります。
手洗いは感染症の蔓延を防ぐシンプルで効果的な方法
(jarmoluk/Pixabay)
研究グループは疫学モデリングとモンテカルロシミュレーションを使って、空港内でのウイルスの広がり方について実験を行いました。
その結果、世界中の空港内での手の清潔度を、現在の20%から30%に引き上げることができれば、空港に由来する感染症の影響を約24%軽減できることがわかりました。
もしこれを60%にできれば、感染症の影響は69%軽減されます。
実験では、世界の主要な10の空港だけでも清潔度を向上させることができれば、病気の広がる強さを現在の45%から37%に減少させられることが示されています。
とはいえ現状、空港での手洗いはそれぞれの判断に委ねられており、空港側あるいは行政が手洗いを強制させることはできません。
研究者によると、空港でトイレに行った後に手を洗う人は70%ほどで、また50%ほどが、衛生的に不十分な方法で手を洗っています。
ニコライデス氏は、空港での手洗い率を上昇させるのは、コストと実用性の面で実現が容易ではないとしながらも、「適切な手指衛生は、感染症の伝播を防ぐためのシンプルで効果的な方法である」と述べています。
研究結果はRisk Analysisに掲載されました。
トイレを出た後に手を洗わない人が30%もいるのが驚きだ……
ウイルスは空港だけじゃなくてどこにでもいるから、こまめに手を洗うようにしたいね
Reference: ScienceAlert