BBCなどの報告によると、先日中国深セン市の病院でHIVウイルスに感染しないよう遺伝子操作された双子の赤ちゃんが産まれたとのことです。
各国のメディアや病院、大学関係者はこの研究自体を懐疑的にみているようですが、果たして真相はどうなっているのでしょうか。
遺伝子編集の次世代への影響
遺伝子の編集は、DNAの一部を削除したり変更したりすることで遺伝的な病気にかかるのを避けるのに役立ちます。
人間以外の生物や植物においては既に導入されている技術ですが、専門家は人間に利用することが未来の世代に悪影響を及ぼすかもしれないと警告しています。
現実にイギリスを含む多くの国でヒトの胚のゲノム編集を禁止する法律があります。もちろん日本も全面的に禁止しています。
デザイナー・ベビー
今回、産まれたとされる「ルル」と「ナナ」という双子の赤ちゃんは、深セン市の南方科技大学研究室で働くジアンクイ教授の手によって”作られました”。
AP通信が取材したビデオの中で教授は、CCR5という遺伝子を排除して赤ちゃんたちがHIVに感染しないように耐性をもたせた、と語っています。
これはいわゆる「デザイナー・ベビー」と呼ばれる、目や髪の色などの外見的特徴を変更するものではなく、将来的に病気に罹患しない子供たちを作るものである、と教授は主張しています。
教授はまた「自分の仕事に議論の余地があることは理解している。しかし家族はこの技術を必要としているだろうと信じています」と語りました。
この実験では男性がHIVウイルスに感染していると報じられています。
HIVは治療できると主張
しかし南方科技大学は、この研究プロジェクト自体を把握していないとし、近く調査を開始する予定であると述べました。
また別の科学者たちは、今回の報告が事実であるならば、教授のしていることはあまりにも不当な実験であると主張しています。
インペリアル・カレッジ・ロンドンの不妊研究教授ロバート・ウィンストン教授は「この実験は科学的不正行為であり無責任である」と述べました。
またキングス・カレッジ・ロンドンの幹細胞科学の専門家ダスコ・イリッチ博士は「これが倫理的と言えるのであれば、その倫理観は世界のそれとは異なっている」と述べています。
ジアンクイ教授はHIVは治療可能であると主張しており、薬物によって子供たちが制御されれば、両親がHIVであってもそれが子供に影響を与えるリスクはほとんどないだろうと語っています。
遺伝子編集は非常に危険な実験
オックスフォード大学の倫理学専門家ジュリアン・サビュレスキュー教授は、「もしこれが事実ならば本当に恐ろしいことだ。遺伝子の編集はいまだ実験的なものであり、遺伝的問題の早期または後期の発生およびガンの発生も含め、オフターゲット変異と関連しているからだ」と述べました。
また「この実験は健常な子供たちに遺伝子編集のリスクを与えるだけで、何の実際的利益はない」と語りました。
科学者たちによると、将来的な赤ちゃんへの遺伝子編集はいつか正当化されるかもしれないが、そのためには多くのチェックと対策が必要だと言います。
セント・ジョージズ大学のヒト遺伝学の専門家ヤルダ・ジャムシディ博士は次のように述べています。
長期的な影響についてはほとんど何も分かっていません。ほとんどの人は道徳的、倫理的に受け入れないだろうと思います。結果がどうなるかに関わらず、新しい治療法に伴うリスク――特に将来の世代に対するリスク――を懸命にそして迅速に社会が考えなければなりません。
何事も新しいチャレンジには困難がつきまといます。
ですがさすがに遺伝子操作を人間の赤ちゃんに施すというのは普通は慎重にならざるを得ないかと思うのですが……中国はそのへんの感覚がちょっと違うのでしょうか。
中国では2015年に世界で初めてヒト受精卵の遺伝子操作が行われ、2016年には世界で2例目となるヒト受精卵へのゲノム編集が行われています。
倫理的な歯止めがかかっている欧米や日本に比べて、かなり前のめりな研究をしている感のある中国。
今回の記事ではそもそも実験が真実なのかどうか疑わしいという論調でしたが、真偽のほどはともかく、子供たちには負担をかけないでほしい、というのが、大方の人の望みであるのは間違いないでしょう。
さすがに目からビームを出すことはできないのか
無理だと思う……ってそんなことしてどうするつもりだったの!?
決まっているではないか!これからの寒い冬、一瞬で風呂を沸かすことができるぞ!
……あ、意外と実用的なんだね
引用:BBC