卵を使った料理やお菓子はそのどれもが食欲をそそり、なによりとてもおいしいものです。
安価でありながら栄養価の高い食品として世界中で消費されている卵ですが、何十年もの間科学者たちは卵のもつ危険性について議論を続けてきました。
卵に含まれているコレステロールが身体に悪影響を及ぼすという説は今では一般的です。
2003年に世界保健機関が発表した報告では一日の食事中コレステロールの摂取目標量は300mg以下となっていますが、卵に多くのコレステロールが含まれているのは周知のとおりです。
一方でコレステロールが不足しすぎることも身体にはよくないという研究結果も存在しています。
このように卵とコレステロールの関係については研究者や被験者の環境などによって全く異なった結果が示されているのが現状です。
こうしたなか医学雑誌JAMAに掲載された最新の研究結果は、卵由来のコレステロール摂取について警鐘を鳴らしています。
それによると一日300mg以上のコレステロールを摂取する人は、そうでない人に比べて心臓病や早期死亡のリスクが高いことが示されています。
1日に300mg以上のコレステロールの摂取は身体に悪影響がある
シカゴにあるノースウェスタン大学ファインバーグ医学校の予防医学科の主任研究員Victor Zhong氏は、食事性コレステロールの主な供給源は卵であると書いています。
彼は卵、なかでも特に卵黄の部分がコレステロールを多く含んでいると指摘し、大きな卵ではたった一つでさえ186mgものコレステロールがあると述べています。
Zhong氏たちの研究グループは29615人の17.5年に及ぶ6つのアメリカの研究グループのデータを調査しました。
(データには一日のコレステロール摂取量や卵の摂取量などが含まれています)
その中には5400件の心血管に関する病気の報告がありました。
さらに詳しく見ていくと、1302件の致命的な脳卒中、1897件の致命的な心不全、113件の心疾患による死亡が含まれていました。
(データの内の6132人は他の要因で死亡していました)
これらの死亡した人とコレステロールの摂取量を調べたところ、1日あたり300mg以上のコレステロールの摂取は心臓病のリスクが3.2%、早期死亡のリスクが4.4%高くなることがわかりました。
また半分の卵の量でも、心血管のリスクが1.1%、早期死亡のリスクが1.9%高くなりました。
こうした結果からZhong氏は、コレステロールを多く含む卵の摂取についての新しい指針をつくる必要性があると結論づけています。
卵の消費量と食事性コレステロール、そしてそれらと心血管疾患との関連については長い間議論されてきました。
しかし最近ではあまり重要視されていない傾向もあります。
コロラド大学医学部のRobert H. Eckel博士は、今回の研究結果は卵とコレステロールが身体に影響を及ぼす結果について再考させるための重要なものであると述べています。
心臓にとって健康的な食事を考えるならば、コレステロールの豊富な食品の摂取を制限することの重要性は却下されるべきではない。
一方で卵と心臓病や早期死亡の危険性との関係は「中程度」にすぎないとも語りました。
卵を含んだ食事とコレステロールのバランスが重要
では卵は危険な食品として摂取しないほうがいいのでしょうか。
イギリスの慈善団体であるBritish Heart Foundationの上級栄養士Victoria Taylor氏は、この種の研究は因果関係ではなく関連性を示すことしかできないので、さらなる研究の余地があるだろうと述べます。
この研究では食べる量に焦点を合わせていますが、卵の調理方法や一緒に食べるものにも注意を払う必要があります。
Taylor氏は「結局のところ健康的な食事はそのバランスが重要だ」と語っています。
残念ながら卵とコレステロールとの関連についての長い論争には決着はつきませんでした。
コレステロールは”善”と”悪”の2つで分けられることが多く、特に悪のイメージが強いためコレステロール自体が悪とみなされがちです。
現代の標準的な食事でコレステロールが不足することはほとんどありませんが、コレステロールを悪と考え避けてばかりいると別の栄養素が不足する自体を招くこともあります。
食事は何よりバランスが大事です。
これからも健康でおいしい食事をとるために卵とコレステロールについて一度考えてみるのもいいかもしれません。
References:CNN