日常的な運動は脳を健康に保つのに役立ちます。
現在、認知症やアルツハイマー病などの脳の機能に関連する疾患は、継続した運動によって発生率を抑えられると考えられています。
一方で、どれだけの量の運動が健康に貢献できるかについては様々な見方があり、決定的なガイドラインは存在していません。
アメリカの研究者は、多数の中高年のデータから、脳によい運動時間を導き出しています。
人間の脳の容量は、1時間の軽い運動で増加します。
一日1時間、あるいは10,000歩の運動は脳の老化を防ぐ
ボストン大学の研究者チームは、アメリカの中高年2354人の3日間の活動データを使って、運動が脳の容量に与える影響について分析しています。
脳の容量は60歳を過ぎると毎年約0.2%ずつ失われていきます。
認知症などの疾患リスクを減らすには、いかにして脳の容量を保っていくかがカギとなります。
参加者の平均年齢は53歳で、男女比は54:46でした。
研究者は参加者の3日間の活動データを、性別や喫煙状況、年齢などを考慮したうえで、脳の容量の変化と照らしあわせました。
その結果、一日あたりの運動時間が長い参加者ほど、脳の容量が増加していることが明らかになりました。
平均して、脳の容量は、身体活動1時間ごとに0.22%増加しました。
また一日に10,000歩以上歩いた人は、5000歩未満の人よりも脳の容量がさらに0.35%増加しました。
運動は軽いものでよく、負荷の違いは結果に影響を与えませんでした。
一方で参加者の半数以上にあたる、身体活動の少ないグループでは、脳の容量に変化は見られませんでした。
これらの結果は、時間をかけた運動が、脳の老化を防ぐための重要な活動であることを示唆しています。
JAMA Network Openに掲載された研究の著者の一人であるボストン大学のニコール・スパルターノ氏は、「軽いレベルの運動でも脳にとっては重要である」と述べ、具体的な運動として、散歩や家事を挙げました。
またより強いレベルの運動については、「言うまでもなく、認知症の発生率の低下や、高齢者の長寿と生活の質の向上に関連している」と述べ、「研究結果は、活発な身体活動を軽視したものではない」と付け加えています。
研究は限られた人数を対象にしたものであり、脳と運動の関係性についてはさらなる検証が必要です。
研究者は、脳の老化が早い人は総じて運動量が少ないと指摘する一方で、座りがちな生活を送る人であっても、頭を多く使う人は老化の速度も遅くなると説明しています。
健康のためには体を動かすのが一番だね
たった数分の運動でも脳に良い影響があると考える科学者もいるようだ
Reference: The Guardian