50代から60代は特に注意 短い睡眠時間は運動のメリットをかき消す

雑ネタ
(Lucas van Oort/Unsplash)

身体を健康に保つ重要な方法の一つは運動です。

適切な運動は病を遠ざけ、認知能力を維持し、寿命を延ばすことがわかっています。

しかし運動の効果を最大限に得るには、別の要素も関わってきます。

 

イギリスの研究者は10年以上の追跡調査から、運動と睡眠の関係性について一つの結論を導き出しています。

それによれば、50代から60代までの人が健康を保つには、適度な運動のほかに6時間以上の睡眠が絶対に不可欠です。

 

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中年の認知機能の維持には睡眠時間が大きく関わる

 

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者チームは、2008年から2019年までに収集された50代以上の市民約9000人のデータを元に、運動と睡眠の関係性について調査しています。

10年以上にわたる追跡調査では、開始時とそれ以後の2年ごとに、面接に加え、身体および認知機能に関する検査が行われました。(認知症と診断された人や、認知機能の衰えが示された人は調査から除外されています)

まず最初の段階で明らかになったのは、身体的に活動的な人が若々しくやせ型であり、喫煙や飲酒、慢性的なうつ病および様々な病気と無縁な傾向にあることでした。

この層は総じて教育レベルが高く、収入も多く得ていました。

ところが追跡を続けていくと、運動をしているグループの一部に、認知面での機能低下が見られるようになりました。

このグループは年齢を重ねるにつれ、記憶の呼び出しが遅くなったり、流暢な会話が困難になるといった反応がありました。

その後研究者は、こうした結果の原因が、睡眠時間の長さに関連していることを突き止めました。

 

2年ごとの検査では運動の頻度のほかに、毎日の睡眠時間についても回答が求められています。

よく運動しつつ睡眠時間が6時間以上の人たちは、総じて健康でした。

一方運動はしているものの睡眠時間が6時間未満の人たちには、持続的な認知機能の低下が見られました。

このグループの認知機能の低下速度は、運動をせず睡眠時間がまちまちな人たちと非常に似通っていました。

この結果は、運動をしても十分な睡眠をとらなければ、認知症やアルツハイマーといった病気に対し、予防効果が期待できないことを示唆しています。

The Lancet Healthy Longevity」に掲載された論文の著者の一人で、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの疫学者であるミカエラ・ブルームバーグ氏は、「私たちの研究は、身体活動による認知的利点を最大限得るには、十分な睡眠が必要であることを示しています」と述べ、認知的健康は運動だけでなく睡眠も一緒に考える必要があると指摘しています。

 

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運動と認知機能の関係性は年齢によって異なる

 

今回の研究では、特に50代から60代の人の短い睡眠時間が、運動による利点をかき消してしまうことが示されました。

一方でこの結果は、70代以上の人には当てはまらないことも明らかになっています。

睡眠時間と認知機能の低下との関連性が、なぜ70歳以降になると薄れるのかはよくわかっていません。

少なくとも現時点ではっきりしているのは、運動が健康や寿命に良い影響を与えること、そしてその恩恵を最大限受けるには、6時間以上の睡眠が必要であるということです。

論文の共著者でユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの疫学者であるアンドリュー・ステプトー氏は、「中年期以降の認知機能を保護する因子を特定することは、認知的に健康な時期を延ばし、人によっては認知症の診断を遅らせることにつながります。世界保健機関は、認知機能を維持する方法に身体活動を挙げていますが、長期的な利益を最大化するためには、睡眠習慣についても考慮する必要があるでしょう」と述べています。

 

 


 

 

しぐれ
しぐれ

睡眠は体だけじゃなくて脳の回復にも重要なんだね

せつな
せつな

無理がきくのは若いときだけってことか……

 

References: The Guardian,CNN