グルテンフリー食は健康な人にとって無意味なだけでなく健康を損なうおそれも、最新の研究結果から

雑ネタ
Image by Aline Ponce from Pixabay

世界中で健康のためと称して行われている食事法「グルテンフリー食」は、最新の研究によれば健康な人にとってほとんど意味がありません。

グルテンフリー食は、小麦を始めとした穀物に含まれるたんぱく質である「グルテン」を除去した食事のことで、健康によいとされたりダイエットに効果があるなどとして多くの人が実践している新しい健康法の一つです。

元々グルテンフリー食は、グルテンを引き金にして起こる疾患を持つ患者のために作られた食事ですが、今では当たり前のように人々の健康法リストにランクインしています。

オーストラリアの研究者が行った新しい研究は、グルテンフリー食が健康的な人にとって無意味であるばかりでなく、場合によっては害になりかねないことさえ明らかにしています。

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グルテンを含む、含まないに関わらず、被験者に特別な変化は見られなかった

 

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オーストラリアのモナシュ大学の胃腸科医エマ・ハルモス氏とピーター・ギブソン氏を中心に行われたグルテンフリー食に関する研究には28人のボランティアが参加しました。

ボランティアは無作為に2つのグループに分けられ、それぞれがグルテンを含まない食事と含む食事を2週間にわたって摂取しました。

 

実験は最も信頼度が高いとされる二重盲検ランダム化比較試験で行われました。

これは被験者だけでなく実験を行う側も食品中のグルテンの有無について把握していないことを意味し(研究者は誰がグルテンフリー食を摂取しているのかを知らない)、より公平で客観的な評価につながります。

2週間後被験者たちは、腹痛、逆流、消化不良、下痢、便秘についての検査を受けました。

結果は、どちらのグループにも胃腸に特定の変化は見られず、また疲労も報告されませんでした

 

もし多くの人が信じているようにグルテンフリー食が“健康的”であるならば、2つのグループ間には何らかの差異が生まれるはずです。

しかしどちらのグループも健康に対するプラス評価やマイナス評価を記録することはありませんでした。

 


 

グルテンフリーの食事はアメリカでは300万人以上が実践していて、彼らはそれを行う理由として「健康」を第一の理由に挙げています。

また著名なアスリートや有名人がダイエット法の一つとしてグルテンフリーを採用したことから、体重に悩む人の新たなダイエット法として浸透しつつあります。

アメリカの調査ではグルテンフリーを実践している人の82%は健康面に何ら問題がないと診断されています。

また一般市民を対象にしたアンケート結果によると、62%の人がグルテンフリーの食事を“健康的”だと考えています。

しかし今回行われた実験結果は、グルテンフリーの食事が健康的な人にとって特別な意味を持たないことを示しています。

 

健康な人がグルテンフリーを実践する意味はない――むしろ健康を損なう可能性も

 

実験結果はグルテンフリー食が健康的な人にとって特別な意味を持たないことを明らかにしましたが、グルテンに弱い体質を持つ人やセリアック病(※)の患者は、引き続きグルテンを含む食品を警戒しなければなりません。

グルテンに過敏な人を対象にした別の二重盲検ランダム化比較試験では、患者の90%以上がグルテンを摂取した際に何らかの症状の再発を経験しました。

またセリアック病患者がグルテンを摂取すると、小腸の内壁を破壊することがあり、骨粗しょう症、不妊症、神経障害、痙攣発作などを引き起こすことがあります。

※セリアック病はグルテンに対する免疫反応が作用して起こる自己免疫疾患で、グルテンを含む食品を摂取することで小腸に炎症を起こす病気です。アメリカでの罹患率は1%程度とされており発症のメカニズムについてはいまだ解明されていません。

 

研究に参加したハルモス氏とギブソン氏は、今回の結果が社会的に広がっているグルテンフリーに対する熱狂を弱めることにつながるか、その推移を慎重に見極めたいとしています。

少なくも過去に行われてきたグルテンフリーに関する研究結果が、人々の信念――グルテンフリー食は健康的である――に影響を与えていないのは確実です。

グルテンフリー食に関する現実的な問題は、健康な人がグルテンを避けることでその健康を損なってしまう可能性があることです。

 

セリアック病患者を対象にした研究では、グルテンフリー食がカルシウムや鉄分、繊維、葉酸、チアミンなどの不足につながることが示されており、また別の研究でも、グルテンの摂取量が少ないグループは2型糖尿病を発症するリスクが高くなることがわかっています。

こうした結果は、病気のために選択肢のない患者とは違い、健康な人があえてグルテンフリー食を続ける理由がないことを示唆しています。

研究者たちは今回の結果が、グルテンフリー食を始めようとする健康な人に対し正しい知識を与えることにつながると期待を寄せています。

 


 

今回の研究は小規模なもので、期間も2週間と比較的短いものでした。

また内臓に関する項目だけを調査しており、体重や精神面での変化などについては記録されていません。

グルテンフリー食はある種の流行ともいえる健康法であり多くの人が実践していますが、今回の研究結果だけで全てを否定するのもいささか暴論と言えるかもしれません。

今後のさらなる研究が待たれるところです。

 

 

 

References:ScienceAlert