ペンタゴン――アメリカ国防総省は、レーザー光線を利用した非致死性兵器の開発を行っています。
ペンタゴンの科学者は5年後にはこの“兵器”を実用化したいと考えていて、これが軍隊に実装されれば、局地的な戦闘場面や大衆の暴動の際などに絶大な効果が期待できるということです。
開発者によれば、この非致死性レーザーは“話す”ことができます。
レーザー光線というだけでどこかSF的なイメージが先行しますが、一体どのような仕組みになっているのでしょうか。
相手に直接語りかける“話せるレーザー光線”
ペンタゴンの科学者たちが進めているこの「非致死性兵器」プロジェクトは、軍事イニシアチブの一環として、人間の会話を遠距離に正確に伝えるレーザー兵器を作ることを目的としています。
この兵器には、“レーザー誘導プラズマ効果”と呼ばれる原理が利用されており、強力なレーザーを発射しプラズマを振動させ、それによって作られた音波が直接対象の周囲に響くという画期的なものです。
これまで、特に狭い場所や局地的な戦闘においては、敵を威嚇したり説得するために致死性の武器を利用する必要がありました。
フラッシュバン(閃光弾)や催涙ガスだけで済めばいいのですが、局面によっては相手を排除するために発砲し、戦闘員は命を危険にさらさなければなりません。
これに対しレーザー誘導プラズマ効果で作られた音波は、相手の身体を(そしてもちろん任務に従事する戦闘員も)傷つけることなくこちらの意図を伝えることができます。
開発者によると兵器の初期のバージョンには次のようなメッセージが含まれています――「止まらなければ撃つことになる」
この話せるレーザー光線が実用化されれば、戦闘従事者は自分たちの身の危険を最小限に抑えることが可能になるでしょう。
下の動画は2018年2月に行われた実験の映像です。
The Joint Non-Lethal Weapons Directorate’s Experimental Plasma Effects Weapon
話せるレーザー光線は何も戦闘だけに限定された兵器ではありません。
ペンタゴンの科学者たちはこの兵器を、武器というよりはコミュニケーションツールである、と考えています。
例えば群衆のコントロールに利用することや、軍事施設への不法侵入者に対して警告を与えたりすることが想定されます。
また周波数を変動させることで、再利用可能な大音量を持つフラッシュバンとしての利用や、対象の衣服だけを発火させたり、逆に衣服を通過し皮膚にだけ不快な刺激を与えたりすることも可能です。
兵器は現時点ではガラスを通過することができますが、科学者たちは将来的にはもっと厚い構造物さえ通過できるように改良を続けています。
MilitaryTimesによると、このレーザー誘導プラズマ兵器はわずか5年で実用化される可能性があります。
科学者たちはレーザーをより正確により遠い距離にまで届くように実験を繰り返しています。
海兵隊からは、兵器のコンパクト化と拡張性の改善について要求がきているということです。
実用化された場合、例えば英語圏以外での言葉の問題や、人の身体に作用する長期的な影響などについて議論が交わされることになるでしょう。
SF映画やゲーム内での描写が現実になる未来はすぐそこにまでやってきているようです。
References:MilitaryTimes
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