気分というものは良い時もあれば悪い時もありますが、誰でもできるならばいつだっていい気分でいたいものです。
現代は何かとストレスの多い時代ですが、普段何気なく行っている行動が実は私たちの気分を悪くさせているのだとしたら、ちょっと立ち止まってみる必要があります。
人間がどんな行動をすると気分が改善するのかについての研究は、私たちがいかに他人との関係において多くの間違いを犯しているのかを明らかにしています。
他人の幸せを願うと気分がよくなる
アイオワ州立大学の心理学者Douglas Gentile氏は、人がどのような行動をしたときに気分が良くなるのか、または悪くなるのかについて研究をしています。
学生たち496人を使った実験で彼らは4つのグループに分けられました。
それぞれ大学構内を12分間歩き、その際に特定の事柄について考えてもらうことにします。
1つめのグループ(127人)は出会った人たちを見て「この人が幸せになることを望みます」と考えてもらいました。
2つめのグループ(125人)は見た人と自分との関連性について考えます。
クラスが一緒だとか、その人と何かを共有することに対する期待や恐怖感、またよく行くレストランなど相手との共通点について思い浮かべます。
3つめのグループ(109人)は見た人と自分を比較して自分が優れている部分について考えてもらいます。
4つめのグループ(135人)は見た人の外見についてだけ考えてもらいました。
衣服の色や質感、化粧やその他の携行物など全ての外部に集中するよう指示されました。
こうして12分間の構内散歩が始まりました。
与えられた課題を持ち帰った学生たちのデータを集計し明らかになったことは、1つめのグループが最も不安レベルが低下し、共感やつながり、思いやりといったスコアが上昇していることでした。
次点が2つめのグループで、彼らも相手とのつながりや思いやりの部分で高いスコアを記録しました。
一方で3つめのグループはかなり低いスコアを出しました。
彼らは基本的に他人を自分よりも下だとみなすことが求められていました。(この結果は1980年代に行われた研究結果とは正反対の結果です)
これについて研究に参加した別の心理学者は「他人を下とみなすことで気分の高揚を図るやり方は本質的に競争戦略である」と述べています。
個人主義が発達しているアメリカでの研究ということもありますが、他人を下にみたりあるいは見下したりすることは精神的な健康に悪いことがわかりました。
SNSに関する別の研究では、他人の日常生活を垣間見ることで無意識のうちに他人と自分を比較し、気分に悪影響を与える可能性があることが示唆されています。
SNSに限ったことではありませんが、他人の不幸を望むよりは他人の幸せを願うほうが――仮に他人が実際に幸せにならなくても――自分にとってはるかに有益です。
研究者はこの効果をマインドフルネスと結び付けています。
マインドフルネスは仏教の瞑想から派生した考え方で、どんな状況にあっても「今この瞬間」に意識を向けることを大事にしています。
また本来の瞑想法には他人の幸せを願うという部分が含まれています。
ブッダが実践していたとされる「慈悲の瞑想」では他者(人間だけでなく動物や植物、宇宙や無生物に至るまで)に意識を向けることで心の平穏を獲得します。
何も修験者になる必要はありません。
ちょっと心が汚れたな~と感じた時には、少しの間自分を離れ、親しい人の幸せを願ってみましょう。
どんな娯楽や薬よりもきっと心が晴れやかになるでしょう。
References:ScienceAlert
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