NASAのジェット推進研究所(JPL)を代表する科学者たちは、先日行われた惑星科学会議で、海王星の衛星であるトリトンへの探査ミッションを初めて提案しました。
ミッションは、安価で太陽系内を探索することを目的としたプログラムである、NASAの「ディスカバリー計画」の下、5億ドル以下の費用で行われる予定です。
探査ミッションの主任研究員であるLouise Prockter氏は、「今こそ任務を遂行するときがきた」と述べ、またこれを低コストでやることが非常に重要であると強調しました。
探査機の名前は「トライデント」で、これはギリシア神話における海の神ネプチューンが持っている武器が由来です。(海王星は英語でネプチューンといいます)
トライデントがトリトンに接近できればボイジャー2号に次ぐ2機目となる快挙
ボイジャー2号が撮影した海王星の衛星トリトン Image credit: NASA/JPL/USGS
トリトンは海王星の衛星として1846年にイギリスの天文学者ウィリアム・ラッセルによって発見されましたが、過去にそこまで到達したことのある探査機は1989年のボイジャー2号だけです。
現在太陽圏を抜けて宇宙の果てに向かっているボイジャー2号は、海王星やトリトンを含む多くの星を調査しました。
トリトンにはボイジャー2号の調査から地下に水があると考えられており、トライデントによる探査によってそれが確認できれば生命の存在の可能性につながります。
またトリトンは他の衛星に比べてとても大きく、太陽系にある衛星の中で唯一主星と逆方向の軌道を持っています。
これはトリトンが海王星よりも外側にある天体群「エッジワース・カイパーベルト」からやってきたからだと考えられています。
先日探査機ニューホライズンズがエッジワース・カイパーベルトにある天体ウルティマ・トゥーレに最接近し宇宙に関する新しい事実を明らかにしました。
トライデントもニューホライズンズ同様トリトンを調査することで、太陽系やその成り立ちについての謎に迫ることができます。
海王星は太陽系の最も外側に位置する惑星です。
これはそこまでの道のりが険しいことを意味します。
海王星は太陽を約164年かけて一周しているため、地球から探査機を飛ばす際には、他の惑星の並びを考慮した時期を選ぶ必要があります。
探査機は惑星の重力を利用したスイングバイで軌道を修正することから、海王星までの道のりにある惑星の位置も発射時期に大きく影響を及ぼします。
唯一海王星に到着したボイジャー2号は1977年に地球を飛び立ちましたが、これはこの時期でなければそもそも海王星にまで行くことが不可能だったからでした。
ボイジャー2号は175年に1回訪れる星の並びを利用することで、ようやく海王星にたどり着くことができました。
トライデントはトリトンに向かうために木星の重力を利用することが予定されています。
ミッションのプロジェクト科学者であるKarl Mitchell氏によれば、2040年までにトリトンに向かう必要があり、この機会を逃すと次にトリトンに到達するには80年以上待たなければなりません。
トライデントのトリトンへのミッションは正式に承認されたわけではありません。
NASAは定期的に候補となるミッションについて見直しを行っているため、トライデントがトリトンを訪れることになるかどうかは今後の展開次第です。
ディスカバリー計画の最近の成功例は、2018年に火星に無事着陸したインサイトミッションでした。
またディスカバリー計画の次のミッションは、木星の周囲にある小惑星帯トロヤ群を調査する「ルーシーミッション」に決定しています。(2021年打ち上げ予定)
トリトンには薄い大気や活発な火山があるらしい……
トライデントがトリトンに行ければいろんな秘密がわかるようになるね
星の並びが重要だから今回の機会を逃さないようにしてほしいものだな
References:NewYorkTimes