月の南極を調査し“水源マップ”を作成するNASAの月面探査車「VIPER(バイパー)」

宇宙
Credits:NASA Ames/Daniel Rutter

NASAは2024年までに再び人類を月に到達させる「アルテミス計画」のための準備を着々と進めています。

先日は、女性宇宙飛行士も着やすく可動域の広い新しい宇宙服が披露されました。

アポロ計画以降人類は月の大地に足を踏み入れていませんが、NASAはアルテミス計画を通して月への理解を深め、最終的には人類の永続的な滞在を目指しています。

月には、その先の目的地である火星やさらに遠くの惑星を探査するための重要な中継地点としての役割が期待されています。

そんな中NASAは、月面の水分を調査することのできる新しいローバー(探査車)を発表しています。

ローバーは月の南極に眠る大量の水資源を記録し、月の歴史上初となる「水源マップ」を作成します。

 

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月の南極に眠る水を検知するVIPERと、搭載された4つの科学機器

 

VIPERのテスト機 Credits:NASA/Johnson Space Center

 

ゴルフカートとほぼ同じサイズをした月面探査機「VIPER-バイパー(Volatiles Investorating Polar Exploration Rover)」は月の土壌環境を測定するための4つの科学機器を搭載しています。

VIPERは月の南極に着陸し、そこに眠っている水や氷の場所を探し当てそれらを記録することで、月面の水源マップを作成します。

 

NASAは2009年に月の南極近くのクレーターに向けて無人探査機エルクロスを衝突させ、そこから得たデータから、月には潜在的に数百万トンにも及ぶ水や氷が眠っていることを発見しました。

月には地球のような大気がないため、長期間人間が活動することは困難を極めます。

しかし、もし水を現地で収集することができれば、そこから酸素を作りだすことができます。

また水から得られる水素はロケットの燃料として使うこともできます。

 

VIPERミッションのプロジェクトマネージャーであり、NASAのエイムズ研究センターのエンジニアリングディレクターであるダニエル・アンドリュース氏は、「月に住むための鍵は水だ」と語ります。

 

地球と同じことです。10年前の月の水の確認以来、現在の問題は、私たちが生活するために必要な量の資源が本当に月にあるのかどうかを知ることです。

 

VIPERは月の南極に到着した後、周囲数マイルの地表を約100日かけて調査します。

VIPERは「NSS(Neutron Spectrometer System)」と呼ばれる装置を使い、月の表面の濡れた部分を探しながら移動します。

NSSが水の存在を感知するとVIPERは移動をやめ、「TRIDENT(The Regolith and Ice Drill for Exploring New Terrain)」と呼ばれる特殊なドリルを展開します。

TRIDENTは月の地面を約1メートル掘り進み、そこから土壌サンプルを採取します。

得られたサンプルは、NASAのケネディ宇宙センターが開発した質量分析計「Msolo(Mass Spectrometer Observing Lunar Operations)」と、エイムズ研究センターが開発した近赤外線揮発性分光システム「NIRVISS(Near InfraRed Volatiles Spectrometer System)」によって分析され、詳しい水の組成や濃度についての詳細がデータとして記録されていきます。

 

VIPERプロジェクトの科学者であり、10年前のエルクロスのプロジェクトにも携わっていたアンソニー・コラプリート氏は、VIPERについて次のように述べます。

 

南極のユニークな場所にローバーを連れていき水を発見できるのは非常にエキサイティングなことです。VIPERは高い濃度の水がどの場所のどれだけ深い地点にあるのかを教えてくれます。

 

VIPERは単に水源を探すだけでなく、月の南極の土壌全般についてのデータも収集します。

その場所が完全な暗闇なのかや、太陽の光が届いた場合それがどの程度なのか、またどれだけの屈折率があるのかなどの情報は、月に隠されている水についてのさらなる理解につながります。

VIPERが作成する水源マップは、将来人類が月を拠点に活動するために必要なデータを提供します。

 

VIPERを乗せたロケットの打ち上げは2022年12月の予定となっています。

※下の動画でVIPERの概要が見られます。

 

NASA is sending a rover to hunt for water on the Moon

 

 

References:NASA