ESA(欧州宇宙機関)の観測衛星「アイオロス (ADM-Aeolus)」が、5年近くの任務を終え、地球に再突入しようとしています。
アイオロスは2018年8月22日に打ち上げられた風観測衛星で、紫外線を利用したライダー(LiDAR)により地球全体の風の動きを記録してきました。
アイオロスのデータは、地球の大気と気象システムに関する知識を向上させ、天気予報の改善、特に熱帯地方や中緯度における台風やハリケーンの予測に貢献しました。
3年のミッション期間を大きく越えたアイオロスは燃料のほとんどを失っており、毎日1㎞ずつ地球に向けて落下しています。
現在ESAは機体が燃え尽きなかった場合を想定し、アイオロスを最適な地点に誘導する準備を始めています。
アイオロスを安全に落下させる方法
90年代後半に設計されたアイオロスとそのミッションは、再突入時に地上からの制御が必要になる可能性を全く考慮していませんでした。
通常多くの衛星は、大気圏に突入する際に機体の全てが燃え尽きますが、アイオロスはミッション期間の延長や宇宙ゴミの増加、そして太陽活動の影響により、再突入の安全な時期や位置を特定できないまま運用終了に至りました。
これによりESAは、この種の衛星では前例のない“援助つきの再突入”に取り組まなければならなくなり、急遽新たな計画が立てられることになりました。
アイオロスは段階的に誘導され高度80Kmでほとんどが燃え尽きる (Credit: ESA)
再突入ミッションでは、数段階に分けて軌道が調整されます。
まずアイオロスが高度280Kmに到達すると、6日間にわたってコマンドを送り、残された燃料を使って軌道を再突入に最適な位置へと修正させていきます。
その後高度250Km地点で機体の状態確認が行われ、150Kmに到達すると12時間をかけて軌道が維持されます。
この地点での操作が機体を安全に再突入させるための最終段階であり、無事チェックが終われば、アイオロスは数時間以内に地球に向けて落下を始めます。
こうした介入により機体の大部分は落下中に燃え尽き、仮に残った部分があったとしても、それらは地上ではなく海に到達します。
アイオロスの再突入の時期は、宇宙の交通事情や太陽の活動などに左右されますが、おそらくは7月末か8月初めになります。
アイオロスのフライトディレクターであるイザベル・ロホ氏は、「破片、飛行力学、地上システムの専門家からなる私たちのチームは、アイオロスを支援するための一連の操作を設計し、再突入がより安全なものになるよう努めています」と述べています。
地上に破片が落ちてくる可能性はどれくらいあるのかな?
アイオロスの高度が下がるにつれて危険度も正確に把握できるようになるから心配はいらないだろう
Reference: ESA