大量の二酸化炭素で覆われた金星は地表の温度が500度近くあり、とても生命が存在できる星ではありません。
しかし10億年ほど前は、豊富な水と緑に囲まれた現在の地球のような場所だった可能性があります。
惑星の軌道を研究しているアメリカの科学者は、金星が灼熱の星になった理由を太陽系のシミュレーションモデルから導き出しています。
金星は木星の重力によって、水と生命を失いました。
金星の軌道を楕円から円に変えた木星の重力
カリフォルニア大学リバーサイド校の宇宙生物学者であるスティーブン・ケイン氏の研究チームは、惑星の軌道を理解するために太陽系のシミュレーションモデルを作り、それぞれの星の重力が互いにどう影響を与えてきたのかを分析しています。
惑星の軌道は「軌道離心率」で表され、0に近づくほど円形であることを示します。
惑星は周囲の星の重力の影響を受けるため、この数値は常に変動しています。
太陽系で最も円形の軌道をもつ惑星は金星で、その軌道離心率は0.006です。(地球は0.016)
ケイン氏のチームは、太陽系が形成され惑星が現在の位置に移動するまでの動きをシミュレートした結果、興味深い事実を発見しました。
それは、木星が金星に与えた影響の大きさです。
モデルは、木星が現在よりも太陽に近かった約10億年前に、金星の軌道を劇的に変えたことを示しました。
木星は太陽系の全ての惑星の2.5倍の質量を持っており、その重力は周囲の星の軌道を変えるほどに強力です。
木星の影響を受けなければ、金星の軌道離心率は0.3でした。
この数値はかなり楕円であり、当時の金星に太陽の熱から逃れる期間があったことを示しています。
軌道離心率の違いを示した図。 赤が0、緑が0.2、水色が0.4、黄色が0.6、ピンクが0.8。現在の金星は赤の軌道に近い (Phoenix7777/CC BY-SA 4.0)
ケイン氏は、「金星は木星が移動するにつれ気候の劇的な変化を経験し、水を失っただろう」と述べています。
先日科学者は、金星の上空の雲の中に、生命の痕跡を示すガスであるホスフィンを発見しました。
これは金星に何らかの生物が存在している可能性を示すため、多くの関心を集めています。
金星のホスフィンについてケイン氏は、「おそらく、まだ調査されていないガスの生成プロセスがある」としながらも、「10億年前の軌道の変化を経験した、惑星で最後に生き残った種かもしれない」と述べています。
研究結果は、Planetary Science Journalに掲載されました。
軌道が楕円だったとしたら季節の変化もあったかもしれないな
地球が今の位置にいるのも木星のおかげなんだろうね
Reference: UC Riverside