初の民間による月面着陸を目指しているイスラエルの非営利団体SpaceILは2月21日に「Beresheet」とよばれる探査機を打ち上げました。
“創世記”という意味を持ったこの探査機は、宇宙開拓が民間レベルで可能になる時代の幕開けを告げる大きな一歩を踏み出したとして世界中の注目が集まっています。
打ち上げ直後にちょっとしたトラブルに見舞われたものの現在は順調に月へ向けてその歩みを進めているところです。
そんなBeresheetが地球をバックに自撮り写真を送ってきています。
民間初の月面探査機Beresheetとプロジェクトに込められた思い
Image Credit:SpaceIL
今週の火曜日に送られてきた写真には私たちの青い星である地球をバックに「小さな国、大きな夢」と書かれたプラカードと共に写るBeresheetの機体が鮮やかに写っていました。
BeresheetはSpaceILが開発した民間で初となる月面着陸を目指した機体で、元々は2007年に始まったLunar X Prizeとよばれる月面着陸コンテストのために制作が始められました。
Lunar X PrizeはGoogleが主体となったコンテストで、各国から民間の団体が参加し独自の機体で月面を目指すものでした。
しかし開発資金が膨大にかかることや開発の遅れなどからコンテストは中止となってしまいます。
その後SpaceILは慈善家や大富豪からの協力を受けてBeresheetの開発を続けてきました。
開発に資金を提供したアフリカの富豪Morris Kahn氏はこのプロジェクトの参加について次のように語ります。
私はイスラエルのような小さな国でも、これまでアメリカ、ロシア、そして中国の3か国しか成し遂げられなかったような大きな仕事ができると示したかったのです。
事実宇宙開発には大きな資金が必要になります。
Beresheetの開発費は約1億ドルですが、1960年代にNASAが月に送った探査機の場合、一機あたりの開発費はインフレ調整後でおよそ5億ドルになります。
Beresheetは国家主導のプロジェクトで必要とされる資金の5分の1で月面に向かうことになります。
これはとても素晴らしいことですが、資金がかけられない分どうしても機能的に削らなければならない部分も出てきます。
Beresheetはコストを節約するために小さく設計されていて月に到着するまでに2.5ヵ月の時間がかかります。
機体は多くの燃料を積めずそのほとんどは地球を離れる際に消費してしまいます。
Beresheetはわずかに残った燃料と月からの重力を使ってゆっくりと月面を目指すことになります。
また月面での活動も2日から3日しかできません。
これはBeresheetが冷却装置を搭載していないためで、月が太陽に照らされた場合はその熱で機体が破損してしまうことを意味します。
Beresheetは4月4日に月の軌道に入り、11日に着陸する予定。Image Credit:SpaceIL
たった数日しか月に滞在できないのに多額の資金を費やす理由があるのでしょうか。
これに対しKahn氏は科学的任務が重要なのではないと述べます。
私たちのプロジェクトはイスラエルを深宇宙に連れていくことです。これは新たなフロンティアであり、月に行くための最初の非政府プロジェクトなのです。
機体の開発に関わっている国内の航空産業は将来この経験が商業的に役立つ可能性があると考えています。
イスラエルの多くの国民がボランティアに参加し完成したBeresheetは4月11日に月面に到着する予定です。
そして着陸後は太陽の熱で壊れるまで月面の調査を行い、その結果をNASAや他の宇宙機関と共有することになっています。
地球をちょうど真ん中にした自撮り写真はなかなかの撮影レベルですね。
月に到着したらもっとたくさんの写真が送られてくることでしょう。
到着までしばらく時間がありますが、Beresheetが何事もなく月に到着し、人類にとっての新しい一歩を刻んだニュースが地球に届けられることを期待します。
References:BusinessInsider