NASAは11月5日、アポロ計画で収集した未開封の月の土壌の一部を公開しました。
これはアポロ17号が1972年12月に月から持ち帰った岩石と土壌の一部で、これまで厳密に保管されてきたものです。
サンプル分析と公開は、NASAの「アポロ次世代サンプル分析-Apollo Next-Generation Sample Analysis(ANGSA)」と呼ばれるイニシアチブの一環として行われました。
このイニシアチブの目的は、2024年までに月への有人宇宙飛行を目指す「アルテミス計画」に先立ち、将来の月のサンプルを研究する方法を学ぶことにあります。
NASAの宇宙材料のキュレーターであるフランシス・マッカビン氏は、アポロ17号の時代から科学技術が進歩したことがサンプル分析につながったと述べます。
これらのサンプルを今公開することで、月に関する新たな科学的発見が可能になります。新世代の科学者たちは、アルテミスの宇宙飛行士が持ち帰ったサンプルを研究するための技術に磨きをかけることができます。
アポロミッションでは数多くの月の石や土壌が地球に持ち帰られていますが、全てが分析されたわけではありません。
それらの一部は、将来科学技術が発展したときのために手付かずのまま保管されてきました。
今回「ANGSA」の対象となったサンプルは、「73001」、「73002」と呼ばれるもので、これらは、非破壊3Dイメージング、質量分析、超高解像度顕微鏡といった技術を用い、前例のない規模で研究されることになっています。
まずこの中の「73002」が最初に開封され、「73001」は2020年初頭に開封されます。
「73002」は開封の前にX線を使って内部の画像が記録され、それらのデータは研究者に送られました。
これは科学者が研究前にサンプル状態を理解するのに役立ち、また開封時に脆弱な土壌部分が損傷した場合の保険となります。
新旧の科学者世代をつなぐサンプル分析の意義
月面で「73001」と「73002」のサンプルを収集するユージン・サーナン宇宙飛行士 Credit:NASA
アポロ計画で採取された月の石や土壌は(保管されているもの以外)現在進行形で研究が進んでいます。
NASAはアルテミス計画で、月への持続的な滞在を目指し、それを起点に火星にまで足を延ばそうとしています。
しかし月は資源が乏しいため、月で長い間留まるためには、地球からの物資の輸送ではなく現地での調達が不可欠となってきます。
これまでの研究で月にあるレゴリスとよばれる塵の部分や、寒い地域での土壌には水分が含まれていることがわかっています。
アポロが持ち帰った土壌サンプルは、月での持続的な活動を可能にするための知識を科学者にもたらします。
ANGSAの科学部門の共同責任者であるチャールズ・シアラー氏は、今回のサンプル調査がアルテミス計画に貢献することを期待しています。
これらのサンプル調査は、月面の歴史や、地滑りの発生方法、月の地殻が時間と共にどのように進化したかなどの新しい洞察をもたらします。そして月や他の惑星にある揮発性の水について理解するのを助けるでしょう。
今回のサンプル開封とそれに伴う研究は、アポロ時代と現代の科学者をつなぐ橋渡しの役目もあります。
研究にはアポロの月面着陸の話を聞いて育った若い科学者が多く参加しているだけでなく、アポロ17号のパイロットの一人で、月面で実際にサンプルを収集したハリソン・シュミット氏も協力しています。
シアラー氏は、「この研究は、アポロの時代の月探検家と、アルテミスから月を探検することになる将来の世代とのつながりも提供しています」と語っています。
アポロの時代から比べ科学分析の技術は飛躍的に進化しました。
また月自体に関しても、数々の無人衛星の活躍によっていろいろなことが分かるようになってきました。
それでも人類にとって月が未知の領域であることに変わりはありません。
約50年ぶりに現代の新しい技術によって分析される月の土壌は、月のさらなる秘密を人類に見せてくれることでしょう。
月の土壌を50年近くもずっと封印していたのがスゴイよね~
手を付けていないサンプルはまだまだあるそうだぞ。今後も分析によって月の新たな真実が明らかになるだろう
References:NASA