ニューホライズンズが目指す最果ての星、ウルティマ・トゥーレ

宇宙
Credits: Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute

1月1日はどんな日ですか?

お正月休みでお年玉をもらう人もいれば、テレビを見て寝正月という人もいるでしょう。

日本中が平和に浸りきっているそんな1月1日、遥か遠い宇宙の果てで、一つの探査機が偉業を達成しようとしています。

 

2015年7月に人類史上初めてとなる冥王星への接近を成し遂げた「ニューホライズンズ」は、さらなる探求のため太陽系の外側に向かって飛行を続けています。

そして2019年の1月1日に太陽系外縁天体の一つ「ウルティマ・トゥーレ」に接近します。

 

これまでの「ニューホライズンズ」の軌跡と「ウルティマ・トゥーレ」の概要、そしてこれからの展望についてお伝えします。

 

 

 

 

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新しい地平線――太陽系で最も遠い天体の観測者

 

ニューホライズンズ……直訳すると“新しい地平線”といったところでしょうか。

NASAによって2006年に打ち上げられたこの無人探査機の目的は、太陽系の最果てに位置する準惑星、冥王星の探査と外縁宇宙の調査です。

 

冥王星:Image Credit: NASA/JHUAPL/SwRI

 

冥王星はこれまで太陽系の第9惑星とされてきましたが、2006年に定義が変わったことで準惑星という位置づけになりました。

 

冥王星は太陽の周りを約247年で1周し、また地球から遥か彼方にあるため探査機を打ち上げるタイミングが限定されました。

1977年に打ち上げられたボイジャー1号は冥王星を訪れるプランがありましたが、NASAのチームは土星の衛星タイタンの調査を選択しています。

また同じ時期に打ち上げられたボイジャー2号は軌道の関係で、そもそも冥王星にたどりつくのは不可能でした。

 

 

ニューホライズンズは2015年7月14日に人類史上初めて冥王星に最接近した探査機となりました。

その際には冥王星の衛星である「カロン」の撮影にも成功しています。

 

これまで太陽から最も遠くまで飛行した探査機は4機(パイオニア10号と11号、ボイジャー1号と2号)ありますが、それらは既に天体の観測を終えひたすら太陽系の外へ向かって飛び続けています。

しかしニューホライズンズは冥王星の探査のあとも、別の天体を調査するためにさらに遠くへと向かっています。

 

ニューホライズンズ――すなわち“新しい地平線”とは冥王星のことであり、さらにその向こうにある太陽系外縁天体のことでもあります。

太陽系外縁天体とは、海王星の軌道の外側を周回する天体群のことで、ニューホライズンズはその「エッジワース・カイパーベルト」と呼ばれる天体群の中にある星を目指しています。

 

緑の点が外縁天体:Outersolarsystem objectpositions labels comp:Wikimedia

 

エッジワース・カイパーベルトの中にあるその星は、ニューホライズンズが目指す新しい地平線です。

そこはまだ誰も見たことも行ったこともない未知の世界です。

 

ウルティマ・トゥーレ――宇宙の果て

 

ニューホライズンズが目指す星は「ウルティマ・トゥーレ」という愛称がつけられています。

トゥーレ”はギリシャ語で伝説の地という意味で、ここにウルティマ――すなわち“究極の”とつくことで、この星の遠さとミッションの重要性を表しています。

 

2014年6月26日、この“トゥーレ”は発見されました。

発見されたときの名前は「2014MU69」でウルティマ・トゥーレは公募で決まった名前です。

ウルティマ・トゥーレの太陽からの距離は約44AU――これは太陽から地球の距離を1とした場合の44倍もの距離であり、約66億キロというとんでもない距離です。

 

Image:NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute/Alex Parker

 

ニューホライズンズは当初から、冥王星とその衛星を探査したのちに太陽系の外側に向かうことが決まっていました。

しかし対象があまりに遠いこともあり候補となる星は未定のままでした。

NASAはニューホライズンズが飛び立った後、天体の軌道を計算し、冥王星の次に訪れる星として2014MU69をピックアップしました。

 

上のNASAの図でPluto(冥王星)から一直線に伸びた軌道の先に2014MU69がありますね。

この天体の直径は約30~45キロほどで太陽の周りを約293年で1周しています。

軌道の関係からこの星に訪れる機会は、まさにこのタイミングしかありません。

 

しかしこれだけ遠くにある小さな天体のデータをどうやって手に入れ、それをニューホライズンズに送るのでしょうか。

これにはアフリカをはじめとした複数の国の協力が欠かせませんでした。

 


 

今年の8月4日、NASAのニューホライズンズのメンバーはアフリカのセネガルで高精度の望遠鏡をのぞいていました。

そのレンズの先にあるのは目的地であるウルティマ・トゥーレです。

 

この日ウルティマ・トゥーレの前方を別の天体が横切ることを知ったメンバーは、精密機械を舗装されていない道で運びその様子を観察しました。

星を別の星が横切ることを掩蔽(えんぺい)といい、これを観察することで周囲の天体の危険性や正確な距離などがわかるようになります。

 

ウルティマ・トゥーレはあまりに遠くにあるため1月1日の接近で間違いがないように、ぎりぎりまで危険性を調査する必要がありました。

今回の調査にはセネガル、コロンビア、フランス、メキシコなどの科学者が協力しています。

新しい地平線への到着は全人類共通の願いでもあります。

 

ニューホライズンズから送られてきたウルティマ・トゥーレの画像:Image credits: NASA/JHUAPL/SwRI

 

地球での調査はウルティマ・トゥーレへのニューホライズンズの到着が首尾よく行われることを示唆していました。

そして同じくニューホライズンズもウルティマ・トゥーレの情報を入手していました。

こうして地球と66億km離れた人工物とのタッグにより、1月1日のウルティマ・トゥーレへの訪問は確実なものとなりました。

 

さらなる地平――第3のゾーンへ

 

ウルティマ・トゥーレに接近するニューホライズンズのイラスト:Credits: NASA/JHUAPL/SwRI

 

太陽系の惑星は大きくわけて二つあります。

1つは水星、金星、地球、火星からなる岩石惑星で、もう一つが火星よりも外側にあるガス惑星および氷惑星です。

NASAは今回のミッションで、ニューホライズンズが挑む外側の領域を「第3のゾーン」と呼んでいます。

 

太陽系の外側には、いまだ知られていない未知の天体が数えきれないほど存在します。

その中には岩石型もガス型も氷型もあるでしょうし、まったく定義から外れた天体だってあるかもしれません。

それらを調査することは、この宇宙と地球の成り立ちを知ることにつながります。

 

人類と地球の希望を背負った流浪の探査機ニューホライズンズは、2019年の元旦にウルティマ・トゥーレを観測します。

人工物として初めて第3のゾーンを調査するニューホライズンズは、私たちにどんな発見を届けてくれるのでしょうか。

 


 

 

しぐれ
しぐれ

うわ~ん、報告書がまとまらないよ~

せつな
せつな

姉さん、そういうときは一旦休んでみるのもいいかと

しぐれ
しぐれ

でも締め切りに間に合わないと活動費が削られちゃうし……

せつな
せつな

休んだ先、その“地平線”の先に喜びが待っているものです。だからここは私が何とかしましょう……それから金庫のカギも一緒に……

しぐれ
しぐれ

じゃあ……ってダメだよぉ!また無駄使いするつもりなんだから~!

 

 

 

 

References:NASA