ニューホライズンズがウルティマ・トゥーレへのフライバイに成功

宇宙
© 2019 Johns Hopkins APL

2019年1月1日、地球からはるか遠くの宇宙の端でNASAの無人探査機ニューホライズンズが大仕事を成し遂げました。

 

カイパーベルトと呼ばれる太陽系の端にある小天体群の一つ「ウルティマ・トゥーレ」に最接近したニューホライズンズは、その未知の天体のデータをメモリー一杯に集めました。

 

ニューホライズンズとウルティマ・トゥーレのイメージイラスト:Credits: NASA/JHUAPL/SwRI

 

ニューホライズンズはウルティマ・トゥーレから3500km離れた地点を時速5万kmで通過しました。

このフライバイのチャンスは1度しかなくNASAのチームは固唾を飲んでデータの到着を待っていました。

 

フライバイは惑星や天体の重力を利用して宇宙船のスピードや方向を変える技術のこと。
天体に最接近することになるため、その期間を利用してデータが収集される。

 

フライバイの時刻は1日の0時33分(アメリカ東部時間)。

ニューホライズンズが全てのデータを収集してから地球に最初の通信が届く予定時刻は10時28分です。

(地球までの通信には6時間8分かかります)

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予定時刻の10時28分に、スペインのマドリッドにあるDSN(ディープスペースネットワーク――深宇宙探査のための情報通信網)はニューホライズンズからの最初のデータをしっかりと受け取っていました。

 

データ通信成功に湧き上がるミッションチームの面々。Image:YouTube

 

ミッションオペレーターとして通信を担当していたAlice Bowmanさんが「宇宙船の状態は良好です。私たちは最も遠い天体へのフライバイに成功しました」と告げると、チーム内に拍手と歓声が沸き起こりました。

 

最初の無線データには宇宙船の状態に関するものしか含まれていませんでしたが、フライバイに成功したこととデータ容量がいっぱいになっていることは確認できました。

 

そしてその後に送られてきた最初の画像データがこちらです。

 

最初に送られきたウルティマ・トゥーレの画像。Credit: NASA/JHUAPL/SwRI; sketch courtesy of James Tuttle Keane

 

低解像度ですが、ウルティマ・トゥーレの特徴的な形が捉えられています。

右の図は今回の画像から判明したウルティマ・トゥーレの自転軸とその方向になります。

 

不鮮明な画像ですが、ウルティマ・トゥーレが大体35km×15kmの大きさであることがわかりました。

 

主任研究員であるAlan Stern氏は次のように述べました。

 

私たちが見たデータはとても素晴らしく、すでにここからウルティマについて学ぶことができます。これからデータはどんどん良くなっていきます。

 

ウルティマ・トゥーレは当初から2つの岩石状をした天体がつながった状態であることが指摘されていました。

その形状はピーナッツやボウリングピンを連想させるものです。

今回のデータからそれが裏付けられた形になりました。

しかし今後の調査ではウルティマ・トゥーレが、もしかしたら互いに周回する2つの天体である可能性もあるとのことです。

 

データ送信には時間がかかるようで、全てが地球に届くのは2020年の9月の予定です。

その中にはどんな驚きのデータが含まれているのでしょうか。

 

ウルティマ・トゥーレが持つ意味

 

科学者たちが今回のフライバイを絶賛する理由は、人類が初めてカイパーベルト天体のデータを調査することができるからです。

 

太陽系が形成された際、外側に散らばった小さな星たちの集団であるカイパーベルト天体は、太陽からの熱がほとんど届かず凍っているため原始の状態を維持していると考えられています。

それはつまり46億年前の太陽系誕生の記憶を保持しているということでもあります。

また非常に落ち着いた周回(ウルティマ・トゥーレは太陽を293年で1周しています)をし、天体同士の衝突などもあまりないとされています。

 

Alan Stern氏はウルティマはとてもユニークだと語ります。

 

ウルティマの構成から、地質学や天体が形成される過程、衛星や大気の有無に至るまでたくさんのことを学ぶことができます。そしてそれが他の星についても教えてくれるのです。

 

66億kmも離れた場所にある小さな天体が、地球をはじめとした星々について教えてくれるのですから不思議なロマンがありますね。

 

ニューホライズンズの今後

 

Credit:JHUAPL/SwRI

 

NASAによるとニューホライズンズはしばらくの間――おそらく2021年まで――カイパーベルトの探査を続ける予定です。

そして予算が認められれば別の天体にフライバイする計画もあるといいます。

 

また原子力電池の状況次第で、太陽圏の外に向けて進んでいくことも考えられるとのことです。

 

先ごろボイジャー2号太陽圏を脱出しましたが、そこにニューホライズンズが加わるならば、宇宙の謎にもっと近づくことができるでしょう。

 


 

今回の偉業は、太陽系誕生の謎に近づく歴史的な一歩です。

 

データ転送速度が遅く、また地球までの距離が遠いため全てが揃うまでには時間がかかりますが、NASAによれば最初のウルティマ・トゥーレの高解像度データは2019年の2月に公開できるとのことです。

 

どんな姿がそこに映っているのかいまから楽しみです。

 


 

 

 

 

 


 

 

 

かなで
かなで

お正月だからいっぱいお菓子を買ってきたよー!

しぐれ
しぐれ

も、もう食べられない~

ふうか
ふうか

私はこの奇妙な形の……ピーナッツをもらおうか

せつな
せつな

ん……やはり正月はこたつとピーナッツにかぎる

 

 


 

ニューホライズンズがウルティマ・トゥーレへのフライバイに成功した話題でした。

 

 

References:NASABBC