月が太陽を遮る日食はとても神秘的で古くから人々の関心を集めてきました。
しかし日食は地球だけで起こるイベントではありません。
4月5日、NASAは2012年に火星に着陸し現在でも調査を続けている探査機キュリオシティ(Curiosity)が、火星の月である「フォボス(Phobos)」と「ダイモス(Deimos)」の日食を撮影したと発表しました。
This March, our @MarsCuriosity rover saw not one but two solar eclipses, by two different moons! 👀
The views it captured of tiny Deimos and larger Phobos (seen here) will be used to better understand the moons’ orbits. Click through for more: https://t.co/7abPqsxQTC pic.twitter.com/8SI6cE5FQi
— NASA (@NASA) 2019年4月5日
3月17日にダイモス、3月26日にはフォボスがそれぞれ太陽を横切り火星で壮観な日食ショーが行われました。
現地でショーを見ることができないのは残念ですが、キュリオシティに搭載されたハイビジョン撮影が可能なカメラ「Mastcam」が地球にその映像を送っています。
日食というと衛星が完全に太陽を遮る場合を指しますが、フォボスもダイモスもその大きさと距離の関係で完全に太陽を隠すことができません。
NASAの科学者はフォボスの日食はいわゆる“金環食”(太陽の光の部分がはみ出る)で、ダイモスの場合は単に“通過”であると表現しています。
ダイモスの“通過” Credits: NASA/JPL-Caltech/MSSS
フォボスの金環食は約35秒続き、ダイモスの通過は数分続いたということです。
(NASAのTwitterのフォボスと上のダイモスの映像はそれぞれが10倍速に編集されています)
NASAが火星で日食を観測するのは今回が初めてではなく、これまでに40以上の日食が観測されています。
フォボスとダイモスは地球の月とは違い、他の小惑星が火星に捕獲されてできたものだと考えられています。
これを検証するには実際に地表に降り立ちサンプルを採取するしかありませんが今のところ火星の2つの月に着陸した探査機はありません。
しかし今回の日食を始め、火星からその月を観察することで多くの情報を得ることができます。
キュリオシティとMastcamの共同研究者であるMark Lemmon氏は「2つの月を時間をかけて観測することでそれぞれの軌道の詳細について知ることができる」と述べています。
そしてこれまでの観測によってフォボスとダイモスが火星のみならず、木星やお互いの重力にも影響を受け、絶えずその軌道が変化していることを突き止めています。
Lemmon氏は火星での日の出、日の入り、そして日食などの現象を観測することは、火星を人々にとって――本の中の出来事ではなく――現実のものにすると語りました。
日食というよりは未確認飛行物体が横切っているようにも見えますが、後ろにある太陽の大きさも含めて宇宙の神秘を感じずにはいられません。
近い将来火星に人類が降り立った際には、地球と同じように2つの月の日食が話題になるのは間違いないでしょう。
References:NASA