ISSで栽培されるチリペッパー、宇宙飛行士の健康や将来の惑星探査にも役立つ期待の食材

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Image by Brett Hondow from Pixabay

NASAは2019年の11月から2020年の1月を目途に、ISS(国際宇宙ステーション)の中において、これまでで初めてとなる根茎の植物を栽培する計画を発表しました。

宇宙空間での栽培に選ばれたその根茎植物は、学名Capsicum annuum――すなわちトウガラシ(チリペッパー)で、ニューメキシコ州原産のエスパニョーラと呼ばれる品種です。

 

宇宙での生活は地球のそれとは比べものにならないほど不便で窮屈です。

そこには食事も含まれていますが、なぜ数多くある食材の中からたった一つの香辛料が宇宙での栽培に選ばれたのでしょうか。

NASAの科学者や植物学者によると、それには2つの理由があります。

 

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エスパニョーラはISS内の極限の環境でも育ち、宇宙飛行士の味覚と健康を助ける

 

NASAの植物生理学者Ray Wheeler氏によると、今回のISSにおけるエスパニョーラの栽培には、この青いトウガラシの持つ特性が大きく関わっています。

Wheeler氏は、宇宙空間でそれほど大きく成長せず、それでいて限られた制御環境でも非常に生産的である品種を探していたと述べています。

世界には何千種類ものトウガラシが存在していますが、エスパニョーラは高地で育ち、生育期間が短く、受粉が容易なことが特徴です。

宇宙空間で作物を栽培することには多くの課題があります。

限られた環境の中で植物は容易に受粉されなければならず、また高二酸化炭素環境で生き残る必要があります。

エスパニョーラはこの特性を全て兼ね備えています。

 


 

NASAの科学者であるJacob Torres氏は、他の科学者がより低い高度で育つトウガラシを宇宙空間で栽培させる計画を立てていたときに、自身の出身地でもあるニューメキシコ産のエスパニョーラを推薦しました。

Torres氏はエスパニョーラが他のトウガラシよりも遥かに高い高度で育ち、また成長期間が短いことを知っていました。

その後エスパニョーラに対して宇宙空間での栽培が可能かどうかのテストが行われますが、その結果は彼の予想を超えたものとなり、結果ISSでの実験に採用されるに至りました。

 

エスパニョーラが宇宙空間での栽培に向いていることは、NASAの科学者たちが証明しそのお墨付きを得ることができましたが、もう一つ重要な側面がこのトウガラシにはありました。

それは宇宙飛行士です。

 


 

Wheeler氏は、宇宙飛行士たちは日々の食事の中でよりスパイシーなものを求めていると語り、エスパニョーラによって多少の辛さが加わることは良いことだろうと語っています。

またエスパニョーラは栄養の面からも宇宙飛行士たちの健康に貢献することが期待されています。

Torres氏は、エスパニョーラには豊富なビタミンが含まれており、これは宇宙飛行士が直面する健康問題のいくつかと戦うのを助けることができると語っています。

無重力空間は宇宙飛行士の体液を頭上まで上昇させ、一種の風邪のような状態を引き起こし、また味覚や視覚の障害を引き起こしますが、Torres氏によると、エスパニョーラに含まれるビタミンCが免疫機能に働くことでそれを防げる可能性があります。

 

ISSでは既にレタス、フダンソウ、大根、白菜、えんどう豆などが栽培されています。

ここにエスパニョーラが加わることで、より一層宇宙空間での食生活が豊かになることは間違いないでしょう。

 

エスパニョーラは将来の火星有人探査の際の重要な食料になる

 

ISS内の植物成長チャンバーで成長する植物 Photo Credit: NASA/ISS

 

NASAがエスパニョーラをISSで栽培するのは、宇宙飛行士の味覚を満足させるためだけではありません。

NASAはアポロ計画以降、有人の宇宙探査を行っていませんが、最近になって再び宇宙開発への意欲を全面に押し出し始めています。

その計画の中には人類初となる月以外の惑星探査――すなわち火星への有人探査が含まれています。

 

先述したNASAの科学者であるJacob Torres氏は、火星への最短旅行には2年がかかることを念頭に置いて次のように語ります。

 

火星に行くロケットを作ることはできますが、食べ物がなければうまくはいきません。

 

仮に2年分の食料を積んで火星に向かったとしても、従来の包装済みの食料では、飛行中の宇宙飛行士に十分なビタミンや栄養素が提供できません。

Torres氏は、従来の食事では胃を満たすことはできても、宇宙飛行士が仕事を遂行するための栄養素が足りないだろうと指摘しています。

こうした問題を解決するためにNASAでは、今回のエスパニョーラだけでなく、宇宙空間という極限の環境に耐え、また宇宙飛行士たちの胃と栄養を満たすことのできる食材を世界中から探し求めています。

 


 

先日もISS内でクロレラを栽培し、酸素と栄養を供給する実験が行われたとの報告がありました。

火星へ人が向かうのはまだまだ先のことになりそうですが、宇宙空間で長い間健康で生きられるための準備は着々と進んでいるようです。

 

 

 

References:CNN,ScienceAlert

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