ESA(欧州宇宙機関)とJAXA(宇宙航空研究開発機構)の水星探査プロジェクト「べピ・コロンボ (BepiColombo)」で打ち上げられた探査機が10日、水星に向かうための最初のステップである地球スイングバイを無事完了しました。
2018年10月に打ち上げられたJAXAの「水星磁気圏探査機 (MMO-みお)」とESAの「水星表面探査機 (MPO)」は、4月10日の13時25分(日本時間)頃に地球から約12,700kmの地点を通過し、その軌道を目的地である水星の方向へと修正しました。
「みお」と「MPO」は現在1つのユニットとして飛行を続けており、2025年12月の水星軌道投入までの間に、今回を含む計9回の惑星スイングバイを行うことになっています。
地球スイングバイ――べピ・コロンボの水星への旅の第一歩
探査機に搭載されている自撮り用のカメラ「MCAM」は、地球を通り過ぎる際の貴重な映像を撮影しています。
映像には機体の一部と共にはっきりと地球の姿が確認できます。
(Credit: ESA/BepiColombo/MTM)
今回のスイングバイは探査機を地球から確認できる、最初で最後の機会でした。
その姿は世界各地の天文台やアマチュア天文家などによって撮影されました。
I love looking at pictures of myself. @ESA_MTM thinks I’m vain. This one is again from my asteroid-catcher friends at
ESA’s Near-Earth Object Coordination Centre in Chile. Everyone can upload their pics of #BepiColomboEarthFlyby to https://t.co/8FgAHEw337 pic.twitter.com/80Ph8vw1IU— Bepi (@ESA_Bepi) April 10, 2020
北海道名寄市にある北海道大学ピリカ望遠鏡(1.6m)で撮影したべピコロンボ、みおの速報です!#BepiColomboEarthFlyby #みお#みおをみおくろう #地球がんばれ pic.twitter.com/6SHBb7GJxG
— Go! Murakami (@gomuramura) April 10, 2020
今回の地球スイングバイはミッションチームにとって決して気の抜ける仕事ではありませんでした。
その理由の一つは、フライバイ中に探査機が地球の影に入り太陽光が遮られてしまう時間帯があることです。
ソーラーパネルが働かなくなる34分間に備えるため、チームは探査機のバッテリーを完全に充電し、また全ての機器を事前にウォームアップしてシステムの温度を綿密に監視しました。
またもう一つの懸念として、世界で広がっている新型コロナウイルスの影響がありました。
スインクバイを延期することは不可能であるにもかかわらず、政府の社会的距離の要請により、ESAのミッションコントロールセンターは限られた職員で対応しなければなりませんでした。
幸い探査機はスイングバイを無事に終えることができました。
ESAのべピ・コロンボの宇宙船運用マネージャーであるElsa Montagnon氏は、「宇宙船のソーラーパネルが日光に照らされていない時間帯は神経をすり減らしたが、太陽電池が再び起動したのを見たときには、べピ・コロンボの旅の準備が整っていることがわかった」と話しています。
「みお」と「MPO」それぞれの探査機は今のところ順調に作動しています。
探査機は残り8回のスイングバイを残しており、次回の金星スイングバイは2020年10月15日に行われる予定となっています。
水星の軌道に入るのが2025年の12月……長い……
探査機は水星に向かう間も太陽風や磁気圏の観測を行っているぞ
References: ESA