NASAは4月19日、火星ヘリコプター「インジェニュイティ」が初飛行に成功したと発表しました。
インジェニュイティは、2月に火星に着陸した探査機「パーサビアランス」に搭載されている小型ヘリコプターで、地球以外の惑星で初めて行われる動力飛行に向け、調整が続けられていました。
インジェニュイティの飛行は、ライト兄弟の初飛行に匹敵する偉業です。
You wouldn’t believe what I just saw.
— NASA’s Perseverance Mars Rover (@NASAPersevere) April 19, 2021
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火星での最初の飛行テストは、パーサビアランスが着陸したジェゼロクレーターから少し離れた、岩の少ない平坦な場所で行われました。
火星までの距離と通信の問題により、機体をリアルタイムで操縦することは不可能で、プロペラの回転から、上昇、ホバリング、下降に至るまでの全ての動作は、NASAのジェット推進研究所のチームが開発したシステムによって制御されました。
インジェニュイティの飛行データは、パーサビアランスを介し、軌道衛星とNASAのディープスペースネットワークを通じて地球に送られました。
日本時間4月19日の19時46分、地球のチームは、インジェニュイティが3メートル地点まで上昇し、30秒間のホバリングをした後、火星の表面に着地したことを確認しました。
地球以外の惑星でヘリコプターが飛ぶのは、今回が初めてのことです。
飛行テストの成功について、プロジェクトマネージャーであるジェット推進研究所のミミ・アウン氏は、「私たちはずっと、火星でライト兄弟のような瞬間を迎えたいと考えてきましたが、ついに実現することができました」と述べています。
またNASAのトーマス・ザブーケン科学局長は、インジェニュイティの飛行をライト兄弟の偉業になぞらえ、飛行テストが行われた場所を、「ライト・ブラザーズ・フィールド」と名付けたと発表しています。
インジェニュイティの機体には、ライト兄弟の飛行機「ライトフライヤー号」の布の一部が収められています。
動作テストを終えたインジェニュイティ。4月16日にパーサビアランスが撮影 (Credits: NASA/JPL-Caltech)
火星でヘリコプターを飛ばすのは困難な挑戦です。
火星の大気は地球の1%と非常に薄く、また重力も3分の1しかないため、揚力を得るには、高回転するプロペラと軽量の機体、さらに十分な動力が必要となります。
インジェニュイティの2枚のプロペラは特殊なカーボンファイバー製で、一分間に2537回転します。
これは地球のヘリコプターの約5倍の速さです。
また機体の重量は1.8キログラムで、火星の過酷な温度変化に耐えられるよう、電気ヒーターとソーラーパネルも備えています。
インジェニュイティには科学機器が搭載されておらず、今回の飛行は、純粋なデモンストレーションとして行われました。
しかし地球以外の惑星で得られた飛行データはとても貴重であり、今後ヘリコプターは、月の探査や、土星の衛星タイタンの探査計画「ドラゴンフライ」などに役立てられる可能性があります。
4月3日にパーサビアランスから離れたインジェニュイティは、30日以内にテストを終了する必要があり、チームは今回得られたデータを元に、今後追加の飛行テストを行うことにしています。
インジェニュイティの次の飛行テストは、4月22日までに行われる予定です。
火星だと遠隔操作してもリアルタイムで確認できないから大変だね
地球のチームは、データが送られてくるまで気が気でなかっただろうな
Reference: NASA