NASAは、火星探査機「パーサビアランス」が搭載しているヘリコプターについて、4月8日までに飛行実験を行う予定であると明らかにしました。
火星で生命の痕跡を探すミッションに携わるパーサビアランスには、測定のための様々な科学機器の他に、「インジェニュイティ (Ingenuity)」と名付けられた小型のヘリコプターが搭載されています。
折りたたまれた状態で収納されているインジェニュイティは、NASAの科学者が「飛行場」と呼ぶ地点で数日かけて展開され、その後飛行実験に移ります。
地球以外の星でヘリコプターが飛ぶのは、人類史上初めてのことです。
「創意工夫」の意味を持つヘリコプターについて、NASAの惑星科学部門のディレクターであるロリ・グレイズ氏は、「インジェニュイティは、別の世界で初となる動力飛行を目的とした技術デモンストレーションです。成功すれば私たちの視野はさらに広がり、火星探査で出来ることの範囲が広がります」と述べています。
Our Ingenuity #MarsHelicopter has to meet a series of milestones before taking its first flight on the Red Planet. Here’s how it’s preparing for the test, targeted for April 8: https://t.co/BI9lXOzueU pic.twitter.com/4gk94xnbjR
— NASA (@NASA) March 23, 2021
火星でヘリコプターを飛ばすのは地球ほど簡単ではありません。
火星は地球に比べ、重力が3分の1、大気圧が1%以下、一日の温度変化が100度以上もある過酷な世界です。
この環境で大気よりも重い物体を飛行させるには、極限なまでに軽い機体と、極寒の夜でもシステムが停止しない十分なエネルギーが必要です。
インジェニュイティは高さ50センチメートル、重量が1.8キログラムで、内部に電気ヒーターと、機体の上部にソーラーパネルを備えています。
揚力を生み出すプロペラは特殊なカーボンファイバーで作られており、薄い大気で飛行するために、1分間で2537回転します。
インジェニュイティの上部にはソーラーパネルが取りつけられている (Credits: NASA/JPL-Caltech)
飛行実験では、まず約6火星日(地球時間で6日と4時間)をかけてヘリコプターを展開します。
この段階で地球の科学者は、パーサビアランスを介してインジェニュイティにコマンドを送り、細かな動作チェックを行います。
機体に問題がなければ、インジェニュイティは毎秒1メートルのペースで上昇を始め、地上3メートル地点で約30秒間ホバリングし、その後着陸します。
この一連の動きは工学的データとして地球に送られ、状況によっては、パーサビアランスとインジェニュイティの双方が、飛行時の画像や映像を撮影します。
今回の実験は、地表と空中におけるヘリコプターの動きを理解するためのもので、30火星日の間に数回行われる予定です。
インジェニュイティのプロジェクトマネージャーであるジェット推進研究所のミミ・アウン氏は、「インジェニュイティは実験的な飛行試験です。私たちは、赤い惑星が投げかけるものに対し、粘り強さと多くの努力、そして少しの創意工夫で取り組むことを目指しています」と述べています。

インジェニュイティの中には、ライト兄弟が使用した飛行機の素材の一部が入れられているそうだ

ヘリコプターが撮影した画像は面白そう……
Reference: NASA