NASAが2020年に計画している火星探査ミッション「マーズ2020」には、地上を探査するローバーだけでなく火星の上空を飛ぶヘリコプターも搭載されます。
その火星ヘリコプターが先日、地上を探査するローバーの機体に取り付けられました。
カリフォルニア州パサデナにあるNASAの研究施設JPL(ジェット推進研究所)では、火星の空を飛ぶためのヘリコプターを開発していて、それは来年の7月に打ち上げられる探査機と共に火星での調査に従事する予定です。
地球以外の惑星探査にヘリコプターが使用されるのはマーズ2020が初めてとなります。
火星ヘリコプターは将来の惑星探査のための重要な技術デモ
Credits: NASA/JPL-Caltech
ツインローターの太陽電池式ヘリコプターは、マーズ2020ローバー(地上探査機)の腹の部分に装着されました。
そこには火星着陸時の衝撃から機体を守るためのカバーがあり、無事火星に着陸した後もしばらくの間はカバーが開くことはなく、調査に最適な場所が見つかるまでは格納されたままとなります。
マーズ2020ローバーは火星のジェゼロ・クレーター(Jezero Crater)と呼ばれる場所に降り立つ予定で、ヘリコプターはそこでテスト飛行を行うのに適した場所が見つかり次第展開されます。
マーズ2020と共に火星に向かう今回のヘリコプターは、リスクの高い技術デモとみなされていて、ここで得られるデータを元に今後第2世代となるヘリコプターを開発、導入する計画です。
JPLのマーズヘリコプタープロジェクトマネージャーであるミミ・アウン氏は、火星の非常に薄い大気の中でヘリコプターを自律的に制御し飛行させるのが自分たちの仕事だと語ります。
ヘリコプターは実験技術の飛行試験として設計されているので科学機器を搭載していません。しかし火星での動力飛行が機能することを証明できれば火星ヘリコプターは将来の探査で重要な役割を果たすことができます。
火星ヘリコプターは崖や洞窟、深いクレーターなどローバーでは到達困難な目的地の調査に加え、小さな科学機器を運んだり、将来行われるであろう人間やロボットの探索を手助けする偵察役としての役割も担っています。
NASAは2024年に計画している有人月面探査計画「アルテミス」を足掛かりに、火星を含む周辺惑星の調査を行うことを目指していて、火星ヘリコプターには、アルテミス計画以後の惑星探査を前進させる重要なデータをもたらす役割が期待されています。
NASAのジム・ブライデンスタイン長官は、火星ヘリコプターを世界で最初に飛行機を飛ばしたライト兄弟の偉業になぞらえます。
火星ヘリコプターは他の世界を飛び回る初の航空機となる予定です。火星ヘリコプターがマーズ2020に加わることは、人類が太陽系での到達範囲を拡大していることを示す1つの例となります。
火星ヘリコプターを搭載したマーズ2020ローバーは、2020年7月にフロリダ州にあるケープカナベラル空軍基地から打ち上げられ、2021年2月18日に火星のジェゼロ・クレーターに着陸する予定となっています。
現在NASAはマーズ2020ローバーと共に火星に向かう人たちを募集しています。
……といっても受け付けているのは名前だけで、集められた名前はマイクロチップに登録されマーズ2020ローバーと共に火星の地に降り立つことになります。
2019年9月30日が締め切りなので、火星に自分の名前を残したいと思う方はぜひ一度NASAのプロジェクトページを覗いてみてください。
Source:NASA