火星にプロペラが舞う!マーズ2020ローバーに搭載される火星ヘリコプター

宇宙
Credits: NASA/JPL-Caltech

NASAはこれまでに多くの探査機を火星に送り込んできました。

去年の11月には火星の地表や地震について観測する探査機インサイトが無事着陸したことが大きな話題となりました。

2020年にはマーズ2020(Mars 2020)とよばれる探査ミッションが計画されています。

 

NASAはこれまで惑星探査の方法に様々なアプローチをとってきました。

星の軌道を周回しデータを収集する探査機から地表を走るランダー、インサイトのような1つの場所にとどまって惑星内部を調査するものなど、目的に応じた機体を設計し打ち上げてきました。

そんななかNASAは将来の火星探査に向けて1つの新しいアイデアを思いついています。

 

それは火星を飛び回るヘリコプターです。

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火星でヘリコプターが飛ぶことはライト兄弟の偉業と同じ歴史的快挙

 

マーズ2020のミッションには地表を探査するためのローバーが付随していますが、そこに新たに加わることになりそうなのが、火星の表面を撮影したり遠くを偵察するための小型のヘリコプターです。

 

NASAのRVLT(Revolutionary Vertical Lift Technology-垂直離着陸のための技術)のマネージャーであるSusan Gorton氏は、マーズ2020に小型ヘリコプターが搭載されることが決まった際に、JPL(Jet Propulsion Laboratory-ジェット推進研究所)から製作の打診を受けました。

NASAはアメリカ“航空”宇宙局とよばれるように、宇宙開発だけでなく飛行機やヘリコプターなどの分野においても革新的な研究をし実用化しています。

 

Gorton氏は火星の大気が地球と比べて極めて薄いことに注意しつつも、航空の専門家が宇宙ミッションを支援できることに興奮していると語ります。

火星でヘリコプターを飛ばすことが出来れば初めての快挙です。

 

火星ヘリコプターの最初の飛行はライト兄弟の功績の宇宙バージョンです。それは驚くべき歴史的瞬間になるでしょう。

 

しかしどうやって火星の薄い大気と過酷な環境でヘリコプターを飛ばすのでしょうか。

 

火星ヘリコプターの課題

 

火星ヘリコプターに使われる技術は将来の地球の都市部における飛行技術と関連している Credits:NASA

 

火星ヘリコプターにはクリアしなければならない課題がいくつもあります。

なかでも大きなものが地球との距離です。

火星には無人探査機が着陸していますが、まだ人間が立ち入れる場所ではありません。

それは火星ヘリコプターの操縦が地球からの遠隔操作になることを意味します。

タイムラグの発生は地表と接触している探査機の場合はあまり問題ではありませんが、空を飛んでいるヘリコプターの場合は大きな問題となります。

このことからGorton氏の制作チームはヘリコプターが自律的に飛行できなければならないと考えています。

 

ヘリコプターは火星の薄い大気や猛烈な寒さの中をバランスを保ちながら飛行しなければなりません。

火星の大気の薄さを地球の大気で表すならば、地表から100,000フィート(約30km)上空とほぼ同じとなります。

もちろんこの高さを飛行できるヘリコプターは存在しません。

 

この問題に対処するためにJPLのエンジニアがいくつかのアイデアを出しました。

アイデアを元に作成された火星ヘリコプターは、毎分2400回転する4フィート(約1.2m)の長さの回転翼を2組持っており、火星上空15フィート(約4.5m)の高さまで飛行することができます。

これは地球のヘリコプターよりも10倍近くも速い回転数です。

そしてヘリコプターのメインの機体部分はソフトボールほどの大きさでその重さが約4ポンド(約1.8kg)になります。

JPLの計算によるとこの仕様のヘリコプターは最大90秒間飛ぶことができ、機体に設置されたソーラーパネルによってバッテリーが充電されることで寒い気温にも対応することができます。

 

マーズ2020のミッションでは計5回のヘリコプターの飛行が予定されています。

そこではヘリコプターを無事に飛ばすことだけが主な目的になりますが、飛行中にいくつかの地表の写真を撮ることも計画されています。

 


 

Gorton氏たちの仕事はJPLの提案を受けた2013年後半から始まっていて、NASAの別の部門とも協力しながらヘリコプターの設計と改良を続けてきました。

 

火星ヘリコプターは空を飛ぶという性質上そのバランスを保つことが重要です。

火星では何が起こるかわからないので、不足の事態に備えてそれは自律して動作する必要があります。

大気の急激な変化や別の物体との衝突(火星で別の飛行物体と遭遇することはないと思われますが……)に備え、ヘリコプターには電源を自動で切り地面に落下するシステムが備え付けられています。

 

Gorton氏は自分たちが何十年にも渡って培ってきた航空技術を将来の地球や火星、またその他の惑星で利用するための準備ができていると語っています。

 

 

火星ヘリコプターのデモンストレーション映像が見られます↓

NASA Mars Helicopter Technology Demonstration

 


 

火星は大気が薄いため地球のようにはいかないのが難しいところです。

ドローンのように火星を俯瞰で見ることができるようになればすごいことですが、地球で操縦する人はかなりのプレッシャーを感じることになりそうです。

 

火星ヘリコプターはマーズ2020ローバーに搭載される予定です。

どんな映像を地球に送ってくれるのか楽しみですね。

 

 

 

References:NASA