1958年から始まったアメリカの宇宙探査計画であるエクスプローラー計画は、広くアイデアを募り各機関が協力することで大きな成果をあげ続けてきました。
これまでに100近くの衛星や探査機が宇宙の磁場や大気、紫外線や惑星などの観察を行っています。
そんなエクスプローラー計画の次回のミッションがNASAから発表されています。
それは宇宙の歴史や進化、そして私たちの住む地球のような生命の存在する星が宇宙でどれだけ一般的なのかを探る壮大なミッションです。
SPHERExは宇宙の歴史と生命について探る
ハッブル宇宙望遠鏡が写した天の川銀河 Image Credit: NASA, ESA, and Hubble Heritage Team
SPHERExは分光光度計を搭載した探査機が近赤外線と光を使って遠い宇宙を調査するミッションです。
銀河系や天の川に宇宙の始まりの痕跡を見つけること、そして生命の存在を示す成分を見つけることなどを目的としています。
NASAの科学ミッション総局の副管理者であるThomas Zurbuchen氏はこのミッションは天文学者のためのユニークなデータの宝庫になるだろうと語ります。
SPHERExは科学における最も大きな謎の1つに新たな手掛かりを与えるでしょう。それは宇宙の歴史の最初の瞬間からの”指紋”を含む前例のない銀河系の地図を届けます。
SPHERExは宇宙の始まりとされるビッグバンの後どのように宇宙が急速に広がっていったのかについての手がかりを得るとされています。
これまでの衛星や火星探査で培われた技術を使って半月ごとに全天を調査します。
そして以前の全天の地図の色解像度をはるかに超える96種類のカラーバンドで構成された地図を作成します。
NASAの管理者であるJim Bridenstine氏はSPHERExミッションについて本当に興奮していると述べます。
SPHERExは宇宙の謎を解明することを目的としたアメリカの強力な宇宙ベースのミッションを拡大するだけでなく、バランスのとれた科学プログラムでもあります。
SPHERExは人間の目には見えない光を使って天の川にある3億以上の銀河や星についてのデータを集めます。
また集められたデータや新たに作成した宇宙の地図は、今後の別の宇宙探査ミッションを助けるために使われるとのことです。
SPHERExミッションの期間は2年間です。
エクスプローラー計画とSPHEREx
エクスプローラー計画の第1号であるエクスプローラー1(ワン) Credit:NASA
NASAのエクスプローラー計画は2016年9月に新たなアイデアの提案を求めました。
そこには9つの案が提出されましたが、最後に残ったのが今回のSPHERExでした。
SPHERExのコンセプトは最高の科学的可能性と最も実行可能な開発計画を示したとして高い評価を受けました。
エクスプローラー計画はNASA主導の惑星探査とは違い比較的安価で実用的なアイデアが採用されてきました。
SPHERExにかかる費用は打ち上げ費用を除いて2億2400万ドルとされています。(それでも高額には違いありませんね)
SPHERExのアイデアはCaltech(カリフォルニア工科大学)のものです。
CaltechはJPL(ジェット推進研究所)と共同で開発を行い打ち上げは2023年の予定になっています。
またこのミッションには他の多くの国や機関がサポートします。
コロラド州ブルームフィールドにあるBall Aerospace社は、SPHEREx宇宙船とミッションについて協力し、韓国天文研究院は試験装置と科学分析に貢献することになっています。
SPHERExは宇宙がどのようにして広がっていったのかを測定します。
そして銀河や星を分類し、水や大気のある星が一般的なのかどうかについて探ります。
人類が宇宙に思いをはせてきた理由の一つに、地球以外の星に生命は存在するのか、というものがあります。
まだ答えは見つかっていませんが、科学の進歩や技術の発達でいつかそれがわかる日が来るかもしれません。
SPHERExが持つ宇宙全体を見渡すレンズが私たちに何を見せてくれるのか楽しみですね。
Source:NASA