地球以外の星に移住するというテーマはSF作品だけでなく、多くの人々や科学者たちを惹きつけてきました。
最近の観測技術の発達によって、太陽系の外にはいくつもの地球と似た星があることがわかっています。
こうした星の相次ぐ発見は、近い将来人類がもう一つの地球を獲得する可能性について人々を楽観的にさせています。
しかし今年のノーベル物理学賞を受賞した天文学者によると、地球を捨てて他の星に移住するのは賢い選択肢ではありません。
数えきれない危険に満ちた宇宙に向かうよりも、人類は今住んでいる場所を大切に扱うべきです――それは別の星に移住するよりもはるかに簡単なことです。
“他の惑星に移住するつもりはない”――そもそも地球は住みやすい場所
Photo by Nicole De Khors on BURST
スイスの天文学者ミシェル・マイヨール氏は、太陽系の外にある太陽のような星(恒星)の周りを回る星(太陽系外惑星)を初めて発見した功績で2019年のノーベル物理学賞を受賞しました。
太陽系外惑星の発見はその後の天文学の方向性を大きく変え、今では太陽系の外側に数千個もの惑星が発見されるまでになっています。
こうした太陽系外惑星の中には、恒星(太陽系でいうところの太陽)からの距離が、生命が存在するのに適した距離――いわゆるハビタブルゾーンに位置しているものも数多くあり、それらはすべて理論上は人類の移住先の候補となり得ます。
観測技術の発達やマイヨール氏の発見などによって、“人類が地球以外の星に住む”というSFのような発想は今では決して夢物語ではなくなりました。
天文学者たちはまだ発見されていない太陽系外惑星を見つけることに躍起になっており、科学者たちは近い将来人類がもう一つの地球に移住するための方法を真剣に模索しています。
しかしマイヨール氏本人は、人類は地球を離れるべきではないと主張します。
太陽系外惑星について話をしているのなら答えははっきりしています。そこに移住するつもりはありません。
AFPのインタビューにそう答えたマイヨール氏は、そもそも地球以外の惑星に移住しようとする考え自体を否定し、「地球がダメになったときのために住みやすい星に移住するという考え自体を殺す必要がある」と強く説きました。
マイヨール氏は、なぜ地球以外の星に移住するという考えが現実的ではないのかについて次のように説明しています。
比較的近い住みやすい惑星でさえ数十光年先にあります。そこに行くために必要な時間はあまりにも長すぎます。
マイヨール氏は、実際に人類が住めるような惑星がかなり近い場所にあったとしても、宇宙の規模からすればそこに到達するにはあまりにも遠すぎるとして、地球を離れる選択肢についてそもそも考えるべきではないことを強調しました。
現在地球から最も近いとされるハビタブルゾーン内にある太陽系外惑星「プロキシマ・ケンタウリb」でさえ、光の速さで4.2年(約40兆キロメートル)かかります。
それは人類にとって途方もない距離です。
今のところ人類が到達できた星は、地球の衛星である月だけです。
月という(宇宙規模で見れば)身近な距離の星でさえ、足を踏み入れることができたのは50年前のアポロ計画の宇宙飛行士だけです。
たくさんの太陽系外惑星が発見されている一方で、人類の宇宙進出の歩みはひどくゆっくりなものです。
マイヨール氏は、人類は地球という素晴らしい住処を大事にしなければならないと説きます。
私たちは地球を大事にしなければなりません。それは非常に美しく、そして絶対に住みやすい場所です。
他の惑星へ移住することが現実的な選択肢ではないことを指摘したマイヨール氏の発言は、地球という素晴らしい星にもっと関心を持つよう私たちを導いています。

もし別の星に行くことができたとしてもそこが人類にとって最適の場所かはわからないからな。

他の星に行かなくても済むようにもっと地球を大事にしなきゃだねー!
References:LiveScience