NASAのジェット推進研究所(JPL)は、オーストラリアのキャンベラにあるディープスペースネットワーク(DSN)の無線アンテナの一つをアップグレードする作業に入ると発表しました。
キャンベラのDSNの施設には現在4つの大型アンテナが設置されています。
今回改修が行われる「DSS43」と呼ばれる最も古いアンテナは、1977年に打ち上げられたNASAの探査機「ボイジャー2号」との通信に利用されています。
改修作業によりボイジャー2号は、2021年の1月まで地球からのコマンドを受け取ることができなくなります。
ボイジャー2号との通信は2021年1月まで不可能
Credits: NASA/JPL-Caltech
現在地球から約170億キロメートル離れた地点を飛んでいるボイジャー2号からのデータを受信するには、その時代遅れの送信機に対応した強力で巨大なアンテナが必要です。
キャンベラのDSS43は直径が70メートルあり、ボイジャーと通信するために拡張されてきた歴史があります。
しかしアンテナは既に48年間利用されており、また通信を行うための様々な機器も作られてから40年以上が経過しているため、これらの老朽化した設備については改修作業の必要性が指摘されていました。
アンテナや通信機器が古くなると予想外のリスクが高まり、2025年頃までは稼働が見込まれているボイジャー2号の残りのミッションが遂行できなくおそれがあります。
DSNの施設はカリフォルニアとスペインのマドリードにもありますが、ボイジャー2号は地球の軌道から見て下方向に飛んでいるため、南半球のアンテナとしか通信することができません。
DSNのチーフエンジニアであるジェフ・バーナー(Jeff Berner)氏は、「アップグレードには11カ月かかりそれは他のDSNにも影響を与えるが、作業が終わればアンテナの信頼性は今よりも遥かに高くなる」と述べています。
改修作業中は、ボイジャーからの通信を他の3つのアンテナを使ってキャッチすることはできますが、こちらからコマンドを送ることはできなくなります。
ボイジャーのミッションチームはアンテナの改修作業に入る前に、探査機を静止状態にする予定です。
アンテナの改修はボイジャー2号だけでなく、他の宇宙探査ミッションにも多くの利益をもたらします。
NASAはアンテナのアップグレードが、将来の月や火星でのミッションに重要な役割を果たすと考えています。
ボイジャーのプロジェクトマネージャーであるJPLのスザンヌ・ドッド(Suzanne Dodd)氏は、「アンテナのメンテナンスは、NASAが将来行うミッションに必要なだけでなく、現在運用中のミッションをサポートするためにも重要です」と述べています。
ボイジャー2号のミッションチームは1月に発生したトラブルで、電源を入れなおすなどの対応に迫られました。
もし今回のアンテナの改修作業中にトラブルが起きたとしても、チームは状況を見守ることしかできません。
ボイジャーとの通信が失われるかもしれない可能性についてドッド氏は、「アンテナがダウンしている間は全てが順調に進むと仮定している」と述べ、仮にトラブルに見舞われたとしても、ボイジャーの保護装置が機能することによって状況に対処できると説明しています。

ボイジャー2号からのデータは貴重だから、アンテナの改修がうまくいくことを祈ろう

11カ月……何事もなく過ぎてほしい……
References: JPL