半世紀以上ぶりにその封印が解かれる……アポロが持ち帰った月のサンプルを研究する新たな計画

宇宙
Image Credit: NASA

ここ数年最も身近な星である月に対する関心が高まってきています。

ロシア、アメリカに次いで月探査機着陸を成功させている中国は、2019年1月3日に嫦娥(じょうが)4号を月の裏側に着陸させました。

またイスラエルの民間組織は現在月に向けて探査機を向かわせています

ESA(欧州宇宙機関)も月の資源を採取するために基地を作る計画を発表していて、こうした各国の月への関心と取り組みは、半世紀以上前のアメリカとソ連の宇宙開発競争を連想させる熱気に満ちています。

 

そんな中唯一歴史上で月面に人間を立たせることに成功しているアメリカは、もっぱら月以外の惑星にご執心のようです……少なくとも今までは。

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厳重に保管されていた月面サンプルを9つの機関が研究――中には月面で真空保存されたものも

 

NASAは3月12日付で、かつてアポロ計画で収集した月の表面のサンプルを新たに研究するために9つのチームを選択したと発表しました。

このサンプルはアポロ15、16、17号が月面で採取したもので、地球に持ち帰られて以降厳重に保管されておりこれまで一度もその封印を解かれていないものです。

この新しい研究には800万ドルの予算があてられています。

 

NASAの科学ミッション部門のThomas Zurbuchen氏は研究の意義について次のように述べています。

 

これらの月面サンプルを初めて研究することで私たちの隣人である月の理解を深めることができます。この研究は将来の月探査に備える次世代の科学者を助けるものとなるでしょう。

 

選ばれた9つのチームにはそれぞれ分担があり、3つのチームがアポロ17号のサンプル、残りの6つのチームが15、16号のサンプルを調査します。

 

アポロ17号のサンプルは1972年に宇宙飛行士のHarrison Schmitt氏とGene Cernan氏によって集められたもので、採取する際に月面で真空保存されています。

この約800グラムのサンプルは今回の研究によって初めてその封が解かれることになります。

 

アポロ17号の月面サンプル採取の様子。レーキ(熊手)を持っているのがわかる。Credits: Eugene A. Cernan, Apollo 17 Commander

 

また15、16号の持ち帰ったサンプルは極度の低温状態もしくはヘリウムの中に保存されています。

いずれの研究も、長い間封印されていた月の成分が地球の大気に触れることでどのような変化をみせるのかを記録します。

 


 

50年以上も前に持ち帰ってきたものを開封せずそのままにしておいたのには理由があります。

ワシントンDCにあるNASAの惑星科学部長を務めるLori Glaze氏は、持ち帰られたサンプルは将来への投資だと語ります。

 

これらの意図的に保存されていたサンプルは、今日の高度で洗練されたテクノロジーを利用することで当時では分からなかった質問に答えることができます。

 

NASAによるとこれらのサンプルは今すぐに開かれるのではなく、汚染を防ぐ方法や科学的成果を最大限得られるような手法について十分にチームと検討した後に行われるということです。

 

 

 


 

アポロ計画では月のサンプルを大量に地球に持ち帰っています。

記録では15、16、17号の持ち帰ったものの総量は283kgにも及びます。

今回封が解かれるのはその一部ですが、当時のNASAの研究者たちが将来のためにサンプルを残そうと考え実行していたことに驚きます。

今は理解できなくても未来ならば可能かもしれない……これは科学とその未来に対する絶対的な信頼がなければできないことでしょう。

 

アポロ計画が終了してから半世紀以上がたちますが、現代の科学で研究される月のサンプルがどんな新たな発見を見せてくれるのか非常に楽しみです。

そして過熱感を増してきている新世代の月探査レースにアメリカが加わるのかについても要注目です。

 

 

References:NASA