ESAとNASAの地球観測衛星はそれぞれの持つ利点を生かし、北極や南極の氷を測定するための共同ミッション「Cryo2Ice (クライオ2アイス)」を行います。
7月7日、ESAは運用中の地球観測衛星「Cryosat-2 (クライオサット2)」の現在の軌道を約1km上昇させることを承認しました。
これによりCryosat-2は、似た能力を持つNASAの観測衛星「Icesat-2 (アイスサット2)」の軌道と共鳴関係になり、約1.5日ごとに地球の極地点で共同作業を行えるようになります。
#CRYO2ICE is set to GO!🎉 @esa concluded its final campaign readiness review this morning and gave the green light for #CryoSat’s orbit change on 16 July🛰️🧊🛰️ pic.twitter.com/aeKhYjzb1B
— esa cryosat mission (@esa_cryosat) July 7, 2020
2つの観測衛星は北極や南極の氷床や海氷を観測していますが、使用している機器の違いにより氷の上に積もった雪の量を計算することが困難でした。
今後は積雪部分を除外し、正確な氷の大きさを知ることができるようになります。
Cryosat-2とIcesat-2の共同作業により正確な氷の量を把握できる
高度約720kmを周回しているCryosat-2のレーダーは、積雪を通過し地表にまで届きます。
一方NASAのIcesat-2が搭載しているレーザーは、雪に到達すると反射してしまいます。
Icesat-2は物体の高さを知るには高性能ですが、海氷に雪が積もっている場合、全体の大きさを誤認してしまう可能性があります。
海氷は全体の約9分の1だけが海面に顔を出しており、科学者はその部分の高さと残りの水中部分の氷を掛け合わせることで、体積を導き出しています。
現在氷床や海氷の大きさを知る計算方法は、非常に古い気候モデルに頼っています。
地球温暖化が進んでいるなか、既にこれらのモデルは機能しなくなりつつあります。
NASAのレーダーとレーザー高度計の科学者であるレイチェル・ティリング博士は、「アイスサットとクライオサットを連携させることで古いデータセットに依存しなくても済むようになる」と述べ、「これにより正確な積雪量と海氷の厚さを知ることができ、特に北極での誤差が減るだろう」と説明しています。
NASAの地球観測衛星Icesat-2 (Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center)
Cryosat-2とIcesat-2のコラボレーションは南極の氷の測定にも役立ちます。
南極の海氷は季節や時間とともに大きく変動します。
冬には陸地全体の面積以上となる1,800万㎢の海氷ができる一方、夏にはわずか200~300万㎢にまで縮小します。
この膨大な変動に積雪の誤差が加わると、海に流れ込む淡水の量を把握することは難しくなります。
ESAの科学者であるマーク・ドリンクウォーター博士は、「南極の氷が解けるとそれは最終的に大西洋に到着し、海の塩分と海洋循環に影響を与える」と説明し、「2つ観測衛星の協力によって海氷の積雪を把握することができれば、大気と海洋の両方の洞察につながる」と述べています。
Cryosat-2は7月16日からスラスターを使って、軌道を上方に修正します。
終了までには数週間がかかる見込みです。
ESAのクライオサットのミッションマネージャーであるトマソ・パリネッロ博士は、「アイスサットはクライオサットのかなり下にいるので直接会うことはできないが、基本的に1.5日ごとに同じ氷をほぼ同時に観測できる」と述べ、「これは画期的であり、異なる2つの機器でこのようなことを行う機会は二度とないかもしれない」と付け加えています。
氷の上に積もった雪の量が宇宙からわかるなんてスゴイねー!
温暖化の影響を知るためにも氷の大きさを正確に測ることがますます重要になってくるな
References: BBC