有史以来、人は夜空を見上げては、宇宙には自分たちしか存在していないのか?という疑問を抱き続けてきました。
天文学者たちは、宇宙にある無数の星の中に私たちと同じ知的生命体が存在していると考えています。
地球以外の星からやってくる生命体、というイメージは人類の想像力をかきたてます。
しかし今のところ宇宙人が発見されたという報告はありません(どこかの政府が隠蔽していれば話は別ですが……)。
それでも、そんな絶望的な状況のなか、地球外生命体は存在するのか?という永遠とも言える問いに挑戦し続ける人たちもいます。
2015年から始まったロシアの資産家が主導するあるプロジェクトは、宇宙からやってくる無数の電波信号を調査し、知的生命体の痕跡を見つけようとしています。
ブレイクスルー・リッスン――宇宙から飛来するガンマ線をくまなく調査する10年プロジェクト
ロシアの億万長者で粒子物理学者でもあるユーリ・ミルナー(Yuri Milner)氏は、自身の資産を用い、基礎科学に関する“ブレイクスルー賞”を設けています。
その中の一つに2015年から始まった「ブレイクスルー・リッスン(Breakthrough Listen)」と呼ばれるプロジェクトがあります。
これは「SETI」――地球外知的生命体探査――の一環として行われるもので、2015年から10年間、宇宙からやってくる人工的な電波や光信号を探索するものです。
宇宙から地球に飛来するエネルギーにはいくつもの種類があります。
その中には、人類がこれまで気づかずに見逃していた知的生命体からのメッセージが含まれていたかもしれません。
ブレイクスルー・リッスンは、そうしたほんの小さな可能性を逃さないために高性能の望遠鏡を配備しました。
プロジェクトに加わった高性能望遠鏡「VERITAS」(青い4つの望遠鏡) © 2011 The VERITAS Collaboration
プロジェクトチームは7月17日、アリゾナ州アマドにあるフレッド・ローレンス・ホイップル天文台で、「VERITAS(ベリタス)」と呼ばれる特殊な4つの望遠鏡が、宇宙からの信号を識別する仕事に加わったと発表しました。
VERITASは英語の「超高エネルギー放射線イメージング望遠鏡アレイシステム」の頭文字をとった造語で、宇宙から飛来する高エネルギーのガンマ線が大気圏に到達した際に示す短期間の青い光(チェレンコフ放射)を発見するよう設計されています。
チェレンコフ放射は非常に短期間――10億分の1秒――しか発生しませんが、VERITASは高性能の4つの望遠鏡を同時に使用することで観測の誤差をなくし、従来の望遠鏡よりも正確なデータを検出することができます。
ガンマ線を観測すること――つまりチェレンコフ放射を観測することは、超新星やパルサー、ブラックホールなどの高エネルギーの天文学的出来事を研究するために欠かせないプロセスの一つです。
チェレンコフ放射が観測できたからといって、それが知的生命体の存在を裏付ける証拠となるわけではありません。
宇宙からは無数のエネルギーが地球に届いています。
その中には、人類が使っているコミュニケーション方法では判別できないメッセージが込められている可能性があります。
プログラムの主催者、ユーリ・ミルナー氏は、地球以外の知的生命体がどこに存在しどのように通信しているのかは分かりません、と語ります。
ですから私たちの哲学は、できるだけ多くの場所をできるだけ多くの方法で見ることです。VERITASは私たちの観測範囲をさらに拡大します。
ブレイクスルー・リッスンには10年間で1億ドルの予算があてられ、その活動中に100万個以上の星と私たちの住む天の川銀河、そしてその周囲の100以上の銀河について探査する予定となっています。
プロジェクトは現在までに、地球から160光年以内にある1000個以上の星を対象に電波信号の痕跡を調査しましたが、残念ながら知的生命体の痕跡を見つけることはできていません。
とはいえブレイクスルー・リッスンはまだ始まったばかりのプロジェクトであり、調査できる星は――文字通り――無数に存在します。
はたして人類はこの広い宇宙で唯一の知的生命体なのか、それともどこかに同じような考えを持つ生命体が存在しているのか……今後のブレイクスルー・リッスンプロジェクトの行方に注目しましょう。
References:BreakThroughInitiatives,LiveScience