2018年の11月26日に火星に降り立ったNASAの探査機インサイトは、2年間にわたる調査のための準備を順調にこなしています。
12月19日には探査の要ともいえる地震計SEIS(Seismic Experiment for Interior Structure)の設置に成功し、地球に送られた鮮明な画像は人々を興奮させました。
そのインサイトが今度はSEISに風と熱から本体を守るためのシールドをかぶせることに成功しています。
I’ve done it — carefully placed this protective cover over my seismometer. Shielding it from wind and temperature changes will help it get its best measurements of any #marsquakes. Stay cozy in there, little guy! pic.twitter.com/6ZcqJPBqKj
— NASA InSight (@NASAInSight) 2019年2月3日
Wind and Thermal Shieldsと呼ばれるこのシールドは火星の過酷な環境からSEISを守るためのものです。
インサイトが着陸したエリシウム平原では一日の温度差が94度にも及びます。
また火星では嵐が頻繁に吹き荒れます。
これらの現象がSEISの正確さを損なわせる恐れがあることから今回のシールドの設置に至りました。
NASAのジェット推進研究所でインサイトの主任研究員でもあるBruce Banerdt氏はシールドについて次のように述べています。
テーブルの上の食べものにシールドをかぶせることを想像してください。このシールドはSEISが日中暖かくなりすぎたり夜間に冷えすぎたりするのを防ぐものです。
食卓のご馳走を狙うハエのような生き物は火星にはいないかもしれませんが、SEISには様々な障害を予想した緻密な設計が施されています。
1つめの防御策は今回設置が成功したシールドです。
SEISは火星の表面を移動したりはせずその場に張り付いて地上と地中の温度変化や地震波を計測します。
しかし無防備なままでは強い風の音や急激な温度変化にさらされることでノイズが発生してしまいます。
それらから正確なデータを守るためにシールドはバリアの役割を果たします。
2つめはSEIS自体の設計です。
SEISの素材は柔軟に出来ていて、ある一部分が伸縮すると他の部分が反対方向に伸縮して影響を相殺するように設計されています。
また機器はチタン製の球体に真空状態で納められていて高い断熱効果を有しています。
3つめはSEISを包む外側の壁がハニカム構造を持っていることです。
この構造は火星が供給する二酸化炭素を閉じ込めることで高い断熱性を提供することができます。
SEIS 中央の黄色い壁の部分がハニカム構造になっている Image:NASA/JPL-Caltech/CNES/IPGP
これら3つのバリアによりSEISはデータに入り込むノイズを除去することができるのです。
この3段構えのバリアシステムがあっても火星からの干渉は終わることはありません。
収集されたデータは最終的にインサイトの気象センサーで精査され、さらなるノイズを取り除いてから地球の科学者へと送られることになっています。
インサイトには別の計測器も積み込まれています。
HP³(ヒート・フロー・プローブ)と呼ばれる温度計は、注射器のように火星の地面に棒状の機器を突き刺し地中の温度を計測するものです。
予定では1月下旬に設置されるはずでしたが、NASAによるとそれは来週になるだろうとのことです。
インサイトは地球以外の惑星では初めて地中を探査することを目的としたミッションです。
SEISとHP³の設置が成功すれば本格的な調査が始まります。
インサイトがどんな発見を私たちに見せてくれるのかとても楽しみです。
Source:NASA