ウクライナのアマチュア天文家Gennady Borisov氏は8月30日、新しい天体を発見しました。
初めこの天体はただの彗星だと考えられていましたが、他の天文学者たちの行った調査の結果、これが他の恒星の重力に縛られない天体「恒星間天体」である可能性が浮上しました。
恒星間天体は太陽系の外から飛来する天体で、現在の技術では太陽系に近づいたときにしか発見することができず、これまでに見つかっているのは2017年に発見された「オウムアムア」だけです。
オウムアムアも当初は彗星だと考えられていましたが、その後の調査で太陽の重力に縛られない天体であることがわかり、観測史上初の恒星間天体であると発表されました。
マサチューセッツ州ケンブリッジにある国際天文学連合の小惑星センター長であるマシュー・ホルマン氏は、複数の天文家グループによる調査の結果、この天体の軌道が太陽の重力に拘束されていないことがわかったとして、これが史上2個目となる恒星間天体であると語っています。
現在太陽から4億2000万km離れた地点を飛んでいるこの天体は、発見者であるBorisov氏の名前を取り「C/2019Q4(ボリソフ)」と名付けられました。
観測史上2個目の恒星間天体、C/2019Q4(ボリソフ)
NASAの地球近傍天体研究センターのDavide Farnocchia氏によると、天体のスピードは時速15万kmで、通常この位置に存在する天体の典型的なスピードを上回っています。
これはC/2019Q4が太陽系の外側で発生した恒星間天体であることを示す有力な証拠です。
C/2019Q4はオウムアムアとは異なり、現時点で太陽系の入り口付近に位置していることから今後数か月は観測でき、最も明るさの増す12月中旬が見ごろの時期となります。
C/2019Q4の軌道予測 Credits: NASA/JPL-Caltech
オウムアムアは2017年の10月19日に発見されましたが、その時点では既に地球に最も接近した地点を通り過ぎていて、2.5か月ほどしか観測の余裕がありませんでした。
しかし今回の「C/2019Q4(ボリソフ)」はこれから太陽系に近づき、軌道を変えながら外へと出ていくため観測に余裕があります。
天文学者たちはC/2019Q4の観測によって、恒星間天体の起源や、彗星や他の惑星との違いなどについてさらに明らかになるだろうとしています。
※なお地球からは最も近い地点で3億km(太陽と地球との距離の2倍)離れているので衝突の心配はありません。
オウムアムアは葉巻型をした天体だと考えられていて、一部の天文学者やオカルト信奉者はそれが宇宙からやってきた異星人の乗り物ではないかと主張していました。
その後国際的な研究チームによってオウムアムアの人口建造物説は否定されましたが、C/2019Q4も地球に近づくにつれその詳細が明らかになることで様々な説が生まれるだろうことは想像に難くありません。
人類が2度目に遭遇する太陽系外からの飛来物であるC/2019Q4は、私たちにどんな新しい宇宙の側面を見せてくれるのでしょうか。
References:NASA,ScienceNews