ExoMarsに黄信号、ESAが着陸機のパラシュートに関しNASAに助けを求める

宇宙
Ⓒ ESA/ATG medialab

ESA(欧州宇宙機関)はロシアと共同で、火星に降り立ち生命の痕跡を探す「ExoMars(エクソマーズ)」という計画を進めています。

火星探査のための機器は2回にわたって打ち上げられる予定で、既に2016年には大気観測機と地上探査車が火星に向かっていますが、残念ながら地上探査車は着陸に失敗しています。

2回目となる打ち上げは2020年に予定されており、計画に携わる科学者たちは、1度目の失敗を繰り返さないよう慎重に機器の調整とテストを繰り返しています。

 

しかし現在ESAの科学者たちはスケジュールを守れるかどうかを心配しています。

今年行われた新しい着陸機のパラシュート実験が2回とも失敗したのが原因です。

 

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ExoMarsは度重なる延期でコストが増大している

 

ExoMarsの2回目の打ち上げは2020年の夏に予定されており、そこではDNAの解明に貢献した物理学者、ロザリンド・フランクリンの名を冠した探査車が火星に着陸することになっています。

2016年の打ち上げでロシアのローバーが着陸に失敗したことからもわかるように、遠く離れた惑星に人工物を無事に着陸させるのは、現代の技術をもってしても簡単なことではありません。

同じ失敗を繰り返さないために、地球の火星とよく似た環境で着陸機のパラシュート実験が行われましたが、今年初めと最近行われた2回の実験ともが失敗に終わりました。

ExoMarsのマネージャーであるピエトロ・バリオーニ氏は「来年の夏に向けて探査機を非常に緊密に準備する予定だ」と述べる一方、計画通りに進む可能性は半々であるとも打ち明けています。

 

膨大な資金を必要とする宇宙開発計画の延期は、さらなるコストの増加を意味します。

ExoMars計画は過去十数年で何度も計画が変更されており、その度に必要とする資金は膨れ上がってきました。

2020年の2度目の打ち上げも元々は2018年に予定されていたものです。

今後もパラシュート実験がうまくいかないようであれば、計画の延期は免れない状況です。

そこでESAのエンジニアは、解決策をNASAに求めることにしました。

NASAは火星探査にかけて、他の国の宇宙機関よりも一歩抜きんでた経験を持っています。

 

NASAのパラシュート実験は今のところ順調

 

ExoMarsのフランクリンローバーは、最初に熱シールドを利用し火星への着陸速度を落とした後、15メートル幅のパラシュートを展開し時速400㎞まで減速します。

その後2番目の35メートルの幅を持つパラシュートが開き、最終的に地上1キロ地点でロケットが点火し、ゆっくりと火星の地表に着陸する仕組みとなっています。

しかしこのパラシュート展開を地球の高度30㎞から落下させたテスト機で再現したところ、2つのパラシュートのどちらもが展開時に引き裂かれてしまうことが判明しました。

バリオーニ氏は「大気圏突入から着陸まではわずか6分しかない」と述べ、その間に起こりうる事態に対し万全の準備をすることの難しさを指摘しました。

 

現在NASAはESAの申し出を受け、新しいパラシュートの設計とテストを行っています。

バリオーニ氏は「NASAによるテストは順調に進んでいる」と語っています。

 


 

ExoMarsにNASAが関与することでスケジュールが守られるかどうかは未知数です。

パラシュート実験は2020年の2月に再び行われる予定ですが、仮にこのテストがパスされたとしても、打ち上げ予定日である7月26日から8月12日までの間に全ての準備が整う保証はありません。

2020年を逃した場合、火星と地球の軌道の関係から、次回の打ち上げは2022年に延期されることになります。

そうなった場合、ESAはさらなる資金の調達に苦慮することになるでしょう。

 


 

 

ふうか
ふうか

火星の大気圏突入から着陸までの時間は恐怖の7分間とも呼ばれていて、綿密な計画と着陸機の自立性が不可欠なんだ

しぐれ
しぐれ

宇宙開発にはお金がかかるから、NASAとの協力で無事来年に打ち上げられるといいね

 

References: The Guardian