太陽系の惑星のうち気体で構成されている木星、土星、天王星、海王星のいわゆる“ガスジャイアント”と呼ばれる星の大気は、地球と同じようにその上層部分が暖かいことがわかっています。
しかしこれらの星は太陽から遠いため、温度上昇がどのようなメカニズムで起きているのかは謎のままでした。
Nature Astronomyに掲載された研究は、太陽から遠い場所に位置するガスジャイアントが熱い大気を持っている理由を、NASAの土星探査機カッシーニのデータから導き出しています。
1997年に打ち上げられ2017年に土星に突入したカッシーニは、その最後のミッションでガスジャイアントの謎の一つを解き明かしました。
極で発生するオーロラの熱が土星の大気を暖める
NASAのジェット推進研究所(JPL)が管理している土星探査機カッシーニは、2017年の9月、約13年に及ぶミッションの集大成として土星に突入し、地球との通信が途切れるまでの間、多くの未知のデータを収集しました。
科学者は土星の温度の謎を調べるため、カッシーニが最後に行った「グランドフィナーレ」と名付けられたミッションの成果から、大気の密度に関するデータを集めました。
大気の密度は高度とともに減少し、またその減少率は温度に依存するため、密度のデータが得られれば、土星の大気の温度地図を作成することができます。
土星の極で発生したオーロラ(青い部分) Credits: NASA/JPL/University of Colorado
土星の温度地図は、最も高温の地域が北極と南極であり、その温度上昇が極付近で発生するオーロラによって引き起こされていることを示しました。
太陽風と土星の衛星からの荷電粒子によって発生したオーロラは上層の大気を加熱し、熱エネルギーは大気の流れに沿って土星全体に行き渡っていました。
オーロラがもたらす温度は、太陽熱だけで暖められた場合の2倍の高さに達します。
研究著者でカッシーニの紫外線画像分光器(Ultraviolet Imaging Spectograph)チームのメンバーであるTommi Koskinen氏は、今回の発見について、「惑星の上層大気の一般的な理解に不可欠なものであり、カッシーニの遺産の重要な一部だ」とし、この結果は、太陽から遠い星の大気がなぜ暖かいのかという疑問に答えるのに役立つだろう、と話しています。
大気の密度と温度の測定は、風速を把握することにも役立ちました。
科学者は土星の大気の研究は、宇宙天気と、太陽系の他の惑星や太陽系外惑星をより深く理解するためのカギであると強調しています。

太陽からめちゃくちゃ遠いのに暖かい大気があるなんて不思議だねー

カッシーニの残したデータは惑星を理解するための重要な遺産と言えるな
References: NASA