NASAは4月1日、火星探査機インサイトの地震計が2つの大きな揺れを検出していたと発表しました。
2018年11月に火星に着陸したインサイトは、これまでの地質調査から500を超える地震を検出しており、今回の地震はそれらの中でも、3番目と4番目に大きいものです。
火星には地球のようなプレートの動きはありませんが、地殻内部の活動により頻繁に地震が発生します。
3月7日と18日に赤道付近のケルベロス地溝帯で発生した地震は、それぞれマグニチュード3.3と3.1で、この場所ではほぼ2年前にも、マグニチュード3.6と3.5の地震が起きています。
In the last several weeks, listening for the heartbeat of Mars has revealed two strong, clear quakes from a region where I’ve felt them before: Cerberus Fossae. These two were magnitude 3.3 and 3.1. So far, I’ve recorded more than 500 marsquakes.
— NASA InSight (@NASAInSight) April 1, 2021
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地震波の伝わり方は惑星の内部の状況によって異なり、たとえば月の地震は、地球に比べてより散乱して伝わる傾向にあります。
インサイトの地震計「SEIS」の開発に関わった、パリ地球物理学研究所の川村太一氏は、「火星には“月のようなもの”と“地球のようなもの”の2つのタイプの地震があり、ケルベロス地溝帯で発生した4つの大きな地震は、全て後者に属する」と説明しています。
今回と2年前の地震には、北半球の夏に発生したという共通点があります。
わずかな振動も検知するSEISにとって、風が比較的穏やかなこの季節は、ノイズに惑わされずに火星内部の音を聞く良い機会でした。
一方で冬のシーズン中、SEISは強い地震をまったく検出できませんでした。
SEISは強烈な風や極端な温度変化から機器を守るため、ドーム型のシールドで覆われており、地面のケーブルを通じてインサイト本体につながっています。
しかしこの構造は、特に気候が荒れている時期にケーブルを震わせ、ノイズの原因になります。
現在NASAの科学者はSEISの精度を上げるため、インサイトのロボットアームを使って、ケーブルに土をかぶせる作業を行っています。
インサイトのミッション期間は当初の2年から2022年12月までに延長されており、作業が進めば、今後さらに多くの地震が検出される可能性があります。
ソーラーパネルで動作するインサイトは、この時期の火星が太陽から遠くにあるため、現在電力が低下した状態にあります。
インサイトのミッションチームは計器を少しずつオフにしながら、火星が再び太陽に近づく時期を待っています。
SEISは一時的に電源が落とされる前に、1、2カ月の調整が行われる予定です。
ケーブルを土で覆えれば、地震とそれ以外の音を区別しやすくなる
火星で起きる地震の回数は、実際にはかなり多いのかもしれないね
Reference: NASA