今年の5月5日にカリフォルニアのヴァンデンバーグ空軍基地から打ち上げられた火星探査機インサイトが、ついに11月26日(日本時間27日)に目的地である火星のエリシウム平原に着陸します。
半年近い長旅の末にたどり着いたこの赤い惑星で、インサイトは一体どんなミッションに挑むのでしょうか。そして地球のお隣さんでもある火星の探査は、私たちにとってどんな意義があるのでしょうか。
インサイトはローバーではなくランダー
……決して車の話ではありません。
これまでにも火星にはいくつもの探査機が向かい調査をしています。そのほとんどがローバー(探査車)として主に火星の表面や地形を調査してきました。
しかし今回のインサイトはランダー(着陸船)に位置付けられています。
それは任務内容が異なるからで、インサイトの目的はその場にとどまり火星の内部を探査することにあります。
今回のミッションには2つの大きな目標があります。
ランダーであるインサイトですが、どうやってその場から動かずにミッションを達成するのでしょうか。
インサイトは太陽電池が主な電力源なので、地球よりも太陽から遠い火星では開けた場所での安定した電力供給が必要なのです。
火星調査における3つの最新テクノロジー
2つの目的を達成するためにインサイトには火星調査に欠かせない最新機器が搭載されています。それらを一つずつ見ていきましょう。
まず一つ目が高性能地震計SEIS(Seismic Experiment for Interior Structure)です。
NASA/JPL-Caltech/CNES/IPGP
SEISは火星内部で起こる地殻活動や表面で起こる風や温度変化、圧力の変化などを高精度で記録することができます。
地震波がどのように伝わってくるのかを調べることで、火星内部の岩石構造や成り立ち、マントルや核に至るまでの詳細な内部データを得るのがSEISの仕事になります。
また地表における砂嵐や温度の変化、遠くで起きた隕石衝突なども記録することができ、それらの情報と合わせることで、太陽系の岩石惑星の成り立ちについて多くの情報を提供します。
SEISは超高感度で水素原子よりも小さな揺れさえ感知できるそうで、今後の仕事ぶりにおおいに期待したいですね。
2つ目は惑星の形成を知るためのもう一つの重要機器ヒート・フロー・プローブ・HP³です。
NASA/JPL-Caltech/CNES/IPGP
インサイト本体から延びるHP³は棒状の計測器で長さは約5メートル。
火星内部に突き刺して地中からの温度の流れを測定します。
岩石惑星は地中に熱を有しそれを外に放出しているのですが、火星も地球や月などと同じプロセスであるかが今回の調査で明らかになります。
科学者の間には”火星は地球の兄弟惑星である”という認識が一般的にありますが、HP³の活躍でそれが本当なのかどうかが判明することでしょう。
最後の一つが火星の揺れを観測する装置RISE(Rotation and Interior Structure Experiment)です。
NASA/JPL-Caltech/CNES/IPGP
この装置はインサイトの上部に取り付けられたアンテナで、地球にあるDSN(ディープ・スペース・ネットワーク)と通信し、その信号の揺れを観測することで火星がどの程度軌道を揺れ動いているかを観測します。
地球や月もお互いの引力で少しずつ揺れています。
火星も同じように揺れていることは以前の火星探査機の調査で明らかにはなっています。しかしどの程度なのかはまだ分かっていません。
この揺れを観測することで、火星の中心部のコアが固体なのか液体なのかがわかり、惑星形成の過程において重要なデータとなるのです。
私たちの普段使っているGPS機能の特別版、といった感じですね――あまりにも遠すぎてイメージが湧きませんが……。
これら3つの機器が組み合わさることで、火星が地球やその他の岩石型惑星と同じなのか、それともまったく別のメカニズムの惑星なのかがわかることでしょう。
インサイトが持ち込んだ現代科学の粋によって火星内部の構造はさらに明らかになります。
将来火星に人類を送る計画がありますが実現までにはまだ数多くの難題が残されています。
火星にはそもそも大気がほとんどなく現状宇宙服なしでは生活することはできません。
また惑星内部の活動によって発生した熱も、大気の薄さが原因でほぼすべてが宇宙空間に流出してしまいます。
太陽からの放射線や宇宙線の影響は人体に計り知れない悪影響を及ぼしますし、今回の調査目的の一つである隕石についても火星にはそれを防ぐ手立てがありません。
こうした現実を見るに火星に住むなどというのは夢物語のようにも思えます。
でも今回のインサイトの調査によって火星移住、とまではいかなくても火星旅行ができるくらいの明るい材料が見つかってほしいな、と少し期待してしまいますね。
インサイトを助ける小さな兄弟――MarCO(マルコ)
Image credit: NASA/JPL-Caltech
NASAのジェット推進研究所が構築したマーズ・キューブ・ワン:Mars Cube One(MarCO)はインサイトと共に打ち上げられ、11月26日にインサイトから別れ火星軌道に投入されます。そしていち早くインサイトからのデータを受け取り地球に送る仕事をします。
MarCoはキューブサット(CubeSat)と呼ばれる小型人工衛星の仲間で、初めて地球以外の惑星を周回するキューブサットとなります。
キューブサットは、これまでの人工衛星と比べると非常に安価に作ることができるため、既に地球の上空では様々な大学や研究機関が運用しています。
上の画像にあるように、どこかノートパソコンのような形をしたこの機械は、本体が約10センチ四方の箱型でほとんどブリーフケースと同じサイズの大きさになっています。
MarCoはシステムが何らかの障害にあったときを想定して2体1組で構成され、インサイトからのデータを通信することに加えて、将来の宇宙探索における電波中継地点としての耐久性や航行性のテストを行います。
MarCOのテストがうまくいくことで今後の宇宙開発に資金面での恩恵が出てくるはずなので、この二人の小さな兄弟には頑張ってもらいたいですね。
全地球人がインサイトの新しい発見に期待しています!
火星の南極には凍った水が存在していると最近話題になりましたね。
昔から火星は地球のお隣さんということもあり、想像力をかきたてられる惑星でした。
タコ型の火星人はたぶんいないとは思いますが、水のあるところには生命が存在する可能性が高いので、今回の調査で何かしら生命存在に関する肯定的な発見があればちょっとわくわくしてしまいます。
これまでの火星探査の歴史ではミッションの成功率は40%ほどしかなく、関係者の着陸前の緊張感は計り知れないものでしょう。
まずは26日に無事インサイトが着陸することを祈りましょう――そして人類や地球、そして太陽系にとっていい発見があることに大いに期待したいと思います。
日本時間11月27日午前4時53分に無事インサイトは火星に着陸しました!おめでとう!
インサイトは関係者が「恐怖の7分間」と呼ぶ降下作業を見事やり遂げ、歴史上8番目となる火星着陸機となりました。
これまでの探査機とは違い惑星内部を調査するという今回のインサイトのミッションは、2年間(火星における1年)行われる予定で、どんな驚きの結果が送られてくるのか今からとても楽しみですね。
インサイトが最初に送ってきた火星の画像。防塵カバーがついているため塵がついている。Image Credit: NASA/JPL-Caltech
その後ロボットアームに取り付けられたカメラから送られてきたもう一枚。非常に鮮明な火星の大地か映っている。Image Credit: NASA/JPL-Caltech
インサイトと別れた後にMarCOが映した火星の姿。インサイトとMarCOの中継リレーによって火星の画像がすばやく地球に送られた。Credit:NASA/JPL-Caltech
(18年11月28日追記しました)
へー、いろんな機械を積んで火星まで行くなんてすごいよねー♪
半年も宇宙空間じゃやることなくてつまんないかもー
火星にはタコ星人がいるってきいたから結構面白いかもしれないよ
タコ―!かなでタコ食べるー!タコ―!
じゃあわたしたちの活動で頑張って資金をためないとねー♪
……う、やっぱりタコはやめとこうかなー……
引用:画像NASA