NASAはディープスペースネットワーク(DSN)の巨大アンテナの改修により、数カ月ぶりにボイジャー2号との交信を確認できたと発表しています。
ボイジャー2号との交信はオーストラリアのキャンベラにあるDSNのアンテナの一つ「DSS43 (Deep Space Station 43)」によって行われました。
DSS43は、1977年に打ち上げられたボイジャー2号との交信に使われている幅70メートルの巨大アンテナで、修理や機器のアップグレードのため、今年の3月から改修作業が行われています。
1972年に運用を開始したDSS43は、これまでに何度もメンテナンスとバージョンアップを繰り返しています。
しかしアンテナの機能は旧世代のままであり、引き続きボイジャー2号とのやり取りを続けるには大幅な改修が必要でした。
改修作業中はデータの送信をストップする必要があり、探査機に一切のコマンドを送ることができなくなります。
3月以来となるボイジャー2号との交信
10月29日、改修作業以来初となるコマンドがボイジャー2号に向けて送信されました。
数日後、探査機からは呼び出しに反応したことを示すデータが送り返されてきました。
11月5日現在、ボイジャー2号は、地球から約188億km離れた地点を時速55,160kmで進んでいます。
As @NASAVoyager 2 moves through interstellar space ~11 billion miles away, it received commands from the upgraded 70-meter Deep Space Network dish at @CanberraDSN. Upgrades are on track to wrap in February — a boon for @NASAPersevere & #Artemis missions. https://t.co/YR4HyvVKpK pic.twitter.com/t9oescg2Vq
— NASA JPL (@NASAJPL) November 2, 2020
ボイジャーへのコマンド送信は、アンテナに新しく取り付けられたハードウェアのテストのために行われました。
NASAの技術者は、48年間交換されていなかった送信機を取り換え、さらに加熱装置、冷却装置、電源装置などの古い機器の全てをアップグレードしました。
アンテナの改修作業はこれで終わりではなく、2021年の2月まで続きます。
NASAのDSNのプロジェクトマネージャーであるブラッド・アーノルド氏は、「修理はアンテナの全ての部分に及んでいる」と説明し、ボイジャーとの交信が成功したことについて、「作業が順調に進んでいる証だ」と述べています。
DSNは、カリフォルニアとスペインのマドリード、そしてオーストラリアのキャンベラにあるアンテナを結び、宇宙にある探査機からのデータを受信しています。
北半球に2つ、南半球に1つというDSNの構成により、ほとんどの探査機は24時間いつでも地球と交信が可能です。
しかしボイジャー2号は、他の探査機よりもはるかに遠い場所を飛んでおり、また地球の下側(南側)に向かっているため、DSS43でしか対応できません。
DSS43のアンテナの幅は、1972年当時64メートルでした。
その後1987年に70メートルに拡張され、以降アンテナは、数々の修理とアップグレードを繰り返しながらボイジャー2号の唯一の窓口として働き続けてきました。
今回のDSS43の改修は、予期せぬトラブルにより、ボイジャー2号との交信が永遠に失われてしまう危険をはらんでいます。
NASAの「宇宙通信・ナビゲーションプログラム (SCaN)」の運用マネージャーであるフィリップ・ボールドウィン氏は、アンテナの改修について、「現在および将来のミッションで引き続き使用していくためのものだ」と説明し、「ボイジャーや他のNASAのミッションにとって理想的な状況ではないが、ほぼ50年前のアンテナに対しては積極的に行動するほうがよい」と付け加えています。
とりあえず不測の事態は避けられたようで一安心だな
交信不能にならなくてよかったねー
Reference: NASA