「社会の敵No.1」無法者ジョン・デリンジャーの墓が85年の時を経て暴かれる

歴史
Credit:FBI.gov

数々の銀行強盗や犯罪を繰り返しながらも大恐慌時代に民衆の人気を集め、1934年にFBIの捜査官に射殺された「社会の敵No.1」として知られる無法者、ジョン・デリンジャーの墓が85年の時を経て暴かれることになりそうです。

これはデリンジャーの甥にあたるマイケル・C・トンプソン氏が、埋葬されている遺体のDNA鑑定を求めたもので、当局であるインディアナ州保健局がその申請を承認したことで明らかになりました。

 

この動きの背景には、長年にわたる“陰謀説”が関係しています。

善人悪人問わず有名な人物の死に関しては、その死後に様々な憶測が飛び交うのが世の常です。

ジョン・デリンジャーもその例に洩れず、彼の信奉者たちは、デリンジャーが1934年に射殺されておらず別の土地で死亡したのだと信じています。

はたしてデリンジャーの墓が暴かれることで陰謀論に決着はつくのでしょうか。

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デリンジャーの遺体は別人のものである可能性がある?

 

CBSニュースなどが伝えたところによると、ジョン・デリンジャーの甥であるマイケル・C・トンプソン氏は、デリンジャーの遺体のDNA鑑定を求め、その墓を掘り起こすことを望んでいます。

トンプソン氏と妹のキャロル氏はそれぞれ宣誓供述書に署名し、「1934年7月22日にシカゴのバイオグラフシアターで撃たれて殺された人物は、実は叔父であるジョン・デリンジャーではなかったという証拠を提示されている」と述べ、現在インディアナポリスのクラウンヒルに葬られているデリンジャーの遺体を掘り起こす許可を保健局に求めました。

トンプソン氏は現在埋葬されているデリンジャーのものとされる遺体について、目の色、耳の形、指紋、歯の配列などの特徴がデリンジャーとは異なるという有力な情報があると主張しています。

そしてそれを確認する唯一の方法は墓を掘り起こしDNA鑑定を行うしかないとしています。

 

トンプソン氏はメディアの取材に対しコメントを残していませんが、CBSニュースによると、ヒストリーチャンネルがこの一部始終をドキュメンタリーとして放送する予定であることが分かっています。

インディアナ州保健局はトンプソン氏に対し遺体を掘り起こす許可を出し、それは9月16日に行われるということです。

 

無法者、ジョン・デリンジャーの生き様とFBI

 

ジョン・デリンジャーが射殺されたバイオグラフシアター前 Credit:FBI.gov

 

ジョン・デリンジャーは10年近くを刑務所で過ごした後、銀行強盗で悪名を馳せ、殺人を含む数々の犯罪を犯しました。

一方で紳士的な立ち振る舞いや、当時の世界恐慌時代にあって貧しい庶民からは金品を奪わなかったことで、義賊としてもてはやされました。

しかし脱獄を何度も繰り返したり、創設されたばかりのFBIの失態(デリンジャー一味と間違えて民間人を射殺してしまう)を誘発したりしたことで「社会の敵No.1」として多額の懸賞金をかけられてしまいます。

その後デリンジャーはガールフレンドの裏切りに遭い、1934年7月22日、シカゴのバイオグラフシアターでの映画鑑賞を終え外に出たところを待ち伏せされ、FBI捜査官たちの一斉射撃を受け死亡しました。

 

デリンジャーの生き様は、小説や映画、音楽など様々な分野に取り入れられ、大衆文化に大きな影響を及ぼし続けています。

 


 

FBIはデリンジャーの死に関していくつもの“神話”が存在していることを認めていて、そのうちの一つが今回のケースにある、射殺された人物はデリンジャーではない、というものです。

しかしFBIはこの神話が陰謀説でしかないと指摘しており、逆にデリンジャーの死を裏付ける証拠は豊富に存在していると主張しています。

 

FBIの公式データでは、当時の捜査官であるM・チャフェッツとアール・リッチモンドがバイオグラフシアターの外でデリンジャーの遺体から2セットの指紋を採取しており、それらは遺体解剖中に採取された指紋と一致しています。

またFBIは、当時の捜査官が間違った男を射殺したといういかなる示唆も否定していて、デリンジャーはズボンのポケットに入っていたコルト.380を取り出そうとしたときに射殺されたとしています。

 

いずれにしても9月16日には真実が明らかになるでしょう。

 


 

トンプソン氏は「デリンジャーが報告されている死亡日時を超えて生きていたのかを知ることは極めて重要である」と語り、もし彼が生きていたならば、彼の身に何が起き、どこに住んでいて、子供がいたのかどうかなどについて知りたい、と宣誓供述書に記しています。

 

神話は神話のままでそっとしておいてほしい気もしますが、9月に行われる調査が全米のみならず世界を揺るがす新事実をもたらすのか、要注目です。

 

 

 

References:CBSNews,npr