2018年のゲーム業界も話題作や人気作、はたまたがっかりした作品など、いろんな意味でわたしたちを楽しませてくれました。(〇ソゲーを掴んだ方……心中お察しします)
年の瀬になると今年のいいところばかり振り返りたくもなりますが、これからのゲーム業界の発展に向けてわたしたちのユーザー目線で悪い部分にはビシッと喝を入れ、すがすがしい気持ちで新年を迎えたいものです。
gamingboltが今年のゲーム業界のダメ出しをしている記事から、これは納得、共感できる!と思えるいくつかを、私的な視点をまじえて紹介します。
早すぎる発表
© 2018 Bethesda Softworks
2006年にFF15(発表時はファイナルファンタジーヴェルサス13)がE3で発表されてからファンの期待は大きく膨らみました。
しかしその後の紆余曲折を経て発売されたのはなんと10年後になってしまいました。
そんな経緯を国内、海外メーカー共に教訓としたのかはわかりませんが、最近のゲームは発表から発売までの期間が短くなってきています。
記憶に新しいところでは2015年のE3におけるFallout4の発表でしょう。
新作の登場を待ち焦がれていたファンの前に登場したベセスダ・ソフトワークスのトッド・ハワード氏が、Fallout4の発売日が半年もたたずにやってくることを宣言し会場は大盛り上がりとなりました。
しかし今年のE3でベセスダは2本の新作に関してちょっとした映像をチラ見せするだけに終わりました。
一つは「TES6(エルダースクロールズ6)」と新IPである「スターフィールド」でした。
またウィッチャー3でRPGの評価を次々と塗り替えたCD projekt REDの新作「サイバーパンク2077」もトレーラーを発表するだけに終わりました。
ちなみにサイバーパンク2077の情報が初めて出たのが2012年――すでに6年が経過しています。
この他にもノーティードッグの「The Last of Us Part 2」や小島監督の「DEATH STRANDING」、マイクロソフトの「Halo Infinite」など、発売日を発表せずトレーラーだけで済ませるという形式が目立ったのが今年のE3でした。
もちろんこれらの作品の発売日は、半年たったいまでも決まっていません。
こうしたやり方はメーカーにとって何らかの意図があるのだろうとは思いますが、ユーザーからしたら、またか、と肩透かしを食らうようであまりいいものではありません。
ましてや昨今魅力的なゲームがゴマンとあるわけですから、トレーラー1つでユーザーの関心をとどめておこうとするのはメーカーにとっても結局は悪手になるような気がします。
エピソードDLC
© 2018 Ubisoft Entertainment
ゲームのダウンロード販売が主流になるにつれてDLC(ダウンロードコンテンツ)の幅も広がってきました。
初めはゲーム進行に影響のない衣装やアイテムなどが安価で販売されるという形態でしたが、最近はより大きな収益源としてメーカーは見ているようです。
2016年に海外で発売された「Hitman」は、ストーリーを6つに分け、エピソード形式としてそれぞれを販売する形をとって多くの批判を浴びました。(日本ではエピソードをまとめて販売されました)
また――今では撤回されましたが――FF7のリメイクが分割エピソードになると発表されたときも、ユーザーの落胆と怒りがあったのは記憶に新しいところです。
最近ではスパイダーマン、アサシンクリードオデッセイ、バトルフィールド5などがエピソード形式でDLCを販売しています。
スマホゲームのような基本プレイ無料ならわからないではありませんが、こうしたエピソード形式のDLCの場合、本体のゲームをそれなりの値段で買う必要があります。
これは元々のゲームを分割しているという印象をユーザーに与えることにつながります。
取ってつけたような内容でないこと、そして値段が適正である(とユーザーが感じられる)こと、この2点が満たされていなければこれから先も批判を受けることは避けられないでしょう。
DLCの価格
© 2017 Bungie, Inc.
DLCの値段をいくらにするのかについてメーカーとユーザーは共に頭を悩ませてきました。
しかし2018年に入っても正解は得られなかったように思われます。
今年発売されたDestiny2のDLC「Fosaken(孤独と影)」はそれだけで40ドル以上(日本では5000円以上)しますが、以前に出た2つのDLC(合わせて約40ドル)を保有していないとプレイすらできません。
もちろん本体であるDestiny2を持っていなければならないのは言うまでもありません。
Destiny2は今後さらに3つのDLCを予定しています。
任天堂からは「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」のDLC「ファイターパス」が発表されています。
これは新キャラクターと新ステージ、そして新曲を1つのセットにしたDLCで、2020年の2月(とても先の話!)までに5回提供されるものです。
価格は2500円ですが、まだ見ぬ5体のキャラクターのための投資として果たして割に合うのか意見の分かれるところです。
単品で買うよりも少しお得になる、という名目で年間パスのような形態が増えてきていますが、それに見合うだけの価値を誰もが見いだせるわけではありません。
今後の展開が白紙であるのにも関わらず安くはないお金を払わせようとするのであれば、いずれメーカーにも手痛いしっぺ返しが待っているかもしれません。
マイクロトランザクション
(C) Rockstar Games, Inc.
マイクロトランザクション(少額課金)は多くのゲームに取り入れられています。
ロックスターゲームスの「GTAオンライン」は、一説にはマイクロトランザクションだけで5億ドル以上を稼いでいるといわれています。
そしてそのゲーム内通貨でいわゆるガチャを引きアイテムを手に入れるという仕組みです。
ガチャを引くためのゲーム内通貨をリアルマネーで買うという手段には賛否両論があります。
海外ではルートボックス問題として取り上げられ、「オーバーウォッチ」や「スターウォーズバトルフロント2」、「シャドウ・オブ・ウォー」などを引き合いに、ギャンブル依存につながりかねないとして大きな批判を浴びました。
その後各メーカーは対策をとり、あからさまなPay-to-Winを避けるような調整を行いました。
ゲーム開発に多額の資金が必要になった現在、メーカーがどのようにして開発費を回収するか頭を悩ませているのは事実です。
その中にはDLCやマイクロトランザクションも選択肢に入っていることでしょう。
しかしユーザーのことを置いてきぼりにし利益だけを求めるようになるならば、お金よりも大事な信用を失いかねません。
早期アクセス
メーカーは様々な方法で収益化を試みています。
ゲームへの先行アクセスもその一つです。
これはゲームの特別版の価格に先行アクセス権を含めるというものです。
今年だけでも「バトルフィールド5」「FIFA19」「シャドウ・オブ・ザ・トゥームレイダー」「ヒットマン2」そして「アサシンクリードオデッセイ」などのタイトルが、特別版の購入や予約で先行プレイできるシステムを採用しました。
ゲームを早くプレイしたいユーザーにとってはありがたいことかもしれませんが、もしゲームそのものが完成していて自信があるのなら、さっさとリリースしてその後の展開につなげるべきです。
本当に良いものならば、ゲームが売れることによって、先行アクセス権で稼ぐ小銭よりも大金を稼ぐことができるはずですから。
Fallout76とパワーアーマーエディション
© 2018 Bethesda Softworks
これまでシングルRPGや没入型ゲームの開発会社、そしてプレイヤーに寛容なことで知られてきたベセスダソフトワークスは、今年大きな方向転換をしました。
それは彼らにとって望ましいものだったはずですが、プレイヤーにとってはそうではありませんでした。
年内にFalloutの続編が出るという情報にプレイヤーは歓喜しました。
しかしその熱は発売までの短いものに終わりました。
レビューやメタスコアが全てではないですが、自分たちの強みであるシングルプレイを捨ててまで挑んだFalloutのオンライン化は、現在のところうまく機能していないようです。
さらに特筆すべきことは、限定版のパワーアーマーエディションに付属していたナイロン製のバッグです。
これは商品説明ではキャンバス地であったものが、実際にはそれよりもはるかに安価な素材であるナイロン地でできていたという問題です。
これに気づいたユーザーがベセスダに説明を求めたところ、バッグの生産者がキャンバス生地を用意できなかったことが原因だとしました。
しかしその後の調査で、不足していたとされたキャンバス地が大量に存在していることがわかり、希望者にはバッグの交換を受け付けることになりました。
この問題が大きくなった背景には、ベセスダがユーザーからの問い合わせがあるまで事実を公表しなかったことにあります。
そしてさらにユーザーの神経を逆なでしたのは、補填としてFallout76内で利用できるゲーム内通貨を提供したことです。
もらえたゲーム内通貨の価値?――それは5ドルでした。(パワーアーマーエディションの価格は200ドル)
被験者の家族にはお詫びとしてヌカコーラ社からお詫びセットなるものが送られました。
その中身はチーズとフルーツの盛り合わせでした。
ベセスダトップのPete Hines氏は、Fallout76は“永続的なサービスを目指す”と語っています。
大きすぎる容量とパッチ
© 2018 Activision Publishing Inc.
インターネットが普及してから世界は便利になりました。
それはゲーム開発者にとっても同じです。
ちょっとしたバグや追加の修正などはネットにつながってさえいればいつでも行うことができます。
パッチがあるおかげでゲーム性が向上したり、追加コンテンツのおかげで見違えるゲームになったりとその恩恵は計り知れません。
そしてパッチだけではなくゲームそのものも、インターネットを介して購入することが当たり前になってきました。
もう発売日にゲームショップの前に並ばなくてもいいのです。
……しかしこれはいいことばかりでもありません。
今年発売されたゲームとそのパッチ類の容量の大きさは、ゲーム史上最大といってもいいレベルでした。
例えば「Call of Duty: Black Ops 4」のダウンロードサイズは約55GBでした。
これだけでもすごいのですが、発売日のDay1パッチの容量はなんと50GB!もう本編と変わりません。
「Fallout76」だと本編に45GB、初日のアップデートに51GBと、こちらもどっちが本編なのかわからないほどです。
今年の最大の目玉作の一つであった「Red Dead Redemption 2」に必要な空きサイズは100GB以上でした。
回線にもよりますが、ダウンロードしているだけでその日のプレイはおあずけなんてこともありそうな大きさです。
容量が多ければよいゲームというわけではありませんが、もう少しなんとかならないものかと思ってしまいます。
いろいろと今年のゲーム業界を(悪い意味で)騒がした出来事についてみてきました。
印象としてはメーカーとユーザーの温度差が顕著になった年ではないか、ということです。
お金のことはもちろんですが、まずゲームメーカーの論理ありきで、ユーザーのことがないがしろにされている部分が目立ったような気がします。
ハードの能力があがり表現方法も多様になった現在、ゲーム制作にはとにかくお金がかかります。
メーカーも慈善事業ではないので開発費を回収する必要があります。
パッケージを売るというかつての方法から、DLCやマイクロトランザクション、限定品や先行アクセスなど収益のチャンネルを増やしてきたのが最近の流れです。
しかし売るという行為の向こう側には必ずユーザーがいるという部分を、もう少しメーカー側も配慮するべき時期にきているのではないでしょうか。
いずれにしても来年以降のゲーム業界にも目が離せません。
Reference:gamingbolt