先日イギリス下院のデジタル・文化・メディア・スポーツ省は、ゲームを含むテクノロジー中毒者を集めた話し合いの場を開き、中毒者がオンラインで時間を消費することの危険性について意見を交わしました。
現在ゲーム中毒に関しては当事者とその保護者、そしてゲーム業界の間で認識の差が存在しています。
英国インタラクティブエンターテインメント協会は”証拠が欠けている”としてゲームと中毒性との関連について否定的な意見を述べています。
今回開かれた話し合いには過去にゲーム中毒だったゲーマーが参加し、自身の経緯やどのような対処をしたのかなどを具体的に語りました。
寝るよりも食べるよりもゲームが優先
話し合いに参加した下院議員の一人はゲームが”善のための力”になりうるとして一定の評価をします。
私たちはゲームがプレイヤーに教育的、生理学的、心理的、レクリエーション的、そして社会的な利益をもたらすことができると信じています。
議員はゲームの持つ豊かな世界や物語が創造性をもたらし、それが批判的思考スキルや共感といった能力につながるとしました。
しかしゲームをプレイする時間については考える余地があるようです。
下院議員はゲーマーのMatus Mikus氏に両親がゲームプレイに関して制限時間を設けたかどうかを尋ねました。
Mikus氏は親は子供とそれについて話し合う必要があるだろうと述べ、個人的な意見としては1日3時間までとしそれ以上のプレイ時間はゲームの持つ性質上、中毒の問題が出てくると述べました。
またMikus氏は自分がゲーム中毒に陥っていた際の状況について話しています。
彼はゲーム内でポイントを得たり報酬を得たりすることに駆り立てられていたと語ります。
私は家に帰ってベッドに入りたいのですが、ポイントのことがあったのでゲームをしなければなりませんでした。
またゲームに負けたとしても今度は別のゲームをしなければならなかったとも語りました。
ゲーム中毒で大学を中退、その後オンラインフォーラムに助けられる
別のゲーム中毒者であるJames Good氏は、大学在学中に32時間ぶっ続けでゲームをプレイしたことがあると打ち明けました。
あまりにも多くのゲームをプレイした結果私の成績は落ち込みました。食べることも寝ることも部屋から出ることもせず、全てをゲームに費やしていました。
Good氏は現実世界よりもゲームの仮想世界を好んでいたことを認めます。
そしてゲームが次第に頭の中で応答システムを始動させ、それ以外のものに喜びをもたらさなくなってしまうと語りました。
彼はポイントを獲得しトロフィーを得ることは良い気分だったが、次第にあまり幸せでないことに気づいてしまい、その後うつ病になり大学を中退したということです。
オンライン上には多くのゲーム中毒症状を抱えた人たちでつくるコミュニティが存在しています。
GameQuittersは何千人もの中毒者が新しい訪問者に対して適切なアドバイスと励ましの言葉を与えています。
Good氏は最終的にGameQuittersに連絡を取り、90日間に及ぶゲームをあきらめるための課題をこなしていきました。
彼は全てのパスワードを処分しゲーム機を戸棚にしまう必要がありました。
また衝動を抑えるために家から離れることもあったといいます。
彼はGame Quittersのフォーラムに参加していたことがゲームをやめる助けになったと語りました。
その一方でゲームと中毒との関係についてはそれが根本的な問題ではないと主張します。
Good氏は自分には規律を求めたり仕事や就寝を促すような両親がいなかったと語りました。
そして下院議員からの、ゲームと暴力犯罪との関連についての質問に対し”相関性はないと思う”と答えています。
現代人はソーシャルネットワーク中毒
下院議員たちはソーシャルネットワークが日常的なものになっていることも問題に寄与していると考えています。
多くの人はゲームだけでなくソーシャルネットワークにも中毒性があると考えています。
人々は常にSNSの更新を気にしています。
今回の話し合いに参加したvloggerのJack Edwards氏はこれについて、”人間が自分のしていることを他人に見せたいと思うのは自然なことだ”と語ります。
そしてソーシャルメディアが若者の心を新しいアイデアへと広げると評しつつも、これがいいことなのか悪いことなのかはわからないと答えました。
今回の話し合いの結果が今後のゲーム業界にどう影響をもたらすのかはわかりません。
デジタル・文化・メディア・スポーツ省は1月にもゲーマーに対してアンケート調査を行っています。
そこではゲームが社会にとって有害であるかどうかや、長時間のプレイがどのような影響を及ぼすのかについて調査が行われました。
ゲームがリアリティを追求し表現が豊かになっていくにつれて、若者と暴力事件との関連性を問う声がますます業界に向けられるようになっています。
またルートボックスを始めとしたゲーム内課金要素が問題になっている現実もあります。
イギリスは大手のゲームメーカーを抱える一大エンタメ国です。
自国の経済と若者の精神的健康を守っていくために今後もこのような議論が交わされていくのは間違いないでしょう。
References:BBC