アメリカの大手IT企業は、ゲームストリーミングサービスの市場を開拓しようと精力的に活動しています。
マイクロソフトのxCloud、GoogleのStadia、NVIDIAのGeForce NOWといったサービスは、手元のスマートフォンやタブレットを使って最新のゲームをプレイでき、従来のようにゲーム専用ハードを購入する必要はありません。
大容量のゲームデータは世界中にあるサーバー上に存在し、処理の全てはそこで行われます。
上にあげた企業にとって、インターネットにつながるデバイスを持つ全ての人が、ストリーミングサービスの潜在的な顧客です。
彼らは新しい市場でのシェアを獲得するべく熾烈な争いを繰り広げています。
ストリーミングはゲーム機や大画面のテレビを介さず行われるため、消費電力が減るという環境にやさしい側面をもっています。
プレイヤーが気にするのはせいぜいスマートフォンのバッテリーくらいなものです。
しかしこれは、ストリーミングサービスそのものがエコであることを意味しません。
家庭で消費されるはずだった電力は、世界のどこかにあるサーバーが肩代わりしています。
これらのサーバーは24時間休まず稼動し、世界中のプレイヤーから送られてくる命令を処理しています。
今後ゲームストリーミングサービスが普及していくにつれ、サーバーによって生み出される温室効果ガスの量は増加していくことになります。
ゲームのストリーミングは地球にやさしくない
英国ランカスター大学の研究者は、将来ゲームストリーミングサービスが普及した際の、環境負荷の度合いについて分析を行っています。
現在ゲームに関連したネットワーク需要は全体の7%であり、そのうちの95%がゲームのダウンロードで構成されています。
ストリーミングサービスはこのダウンロードの部分がなくなるため、一見すると必要な電力が減少するように思われます。
しかしゲームは映画や音楽以上のデータが含まれています。
ゲームをストリーミングでプレイする人が増えれば増えるほど、それを処理するサーバーは大きな負担を抱えます。
研究ではストリーミングが10年後の未来にどれだけ普及しているのかを3つの段階にわけ、環境への影響について評価しました。
その結果、ゲーマーの90%がストリーミングに移行したケースでは、現在のようなニッチのままでいるケースと比較して、年間の温室効果ガスの排出量が30%増加することがわかりました。
NVIDIAのクラウドゲーミングサービスGeForce NOW Ⓒ NVIDIA
ストリーミングが普及すれば、ゲーム機の製造で発生する温室効果ガスが削減されます。
しかしストリーミングに使われるエネルギーはそれ以上の影響を環境に与えます。
この研究では、現代のストリーミングの基準である、720pと1080pの解像度でシミュレーションを行っています。
10年後、高解像度のゲームが普及すれば、ストリーミングによるエネルギー消費はさらに増えるおそれがあります。
研究者は、「4K解像度でのストリーミングが普及すれば、ゲームオーバーになるかもしれない」と警告しています。
既にデジタル化が進みストリーミングサービスが普及している映画や音楽の分野では、DVDやCDといった物理メディアの生産が減り、商品の輸送も少なくなっています。
これはゴミの処理にかかる費用や埋め立て地の節約、そして輸送時に発生する二酸化炭素の削減につながっています。
ゲームも同様の道を歩もうとしていますが、実際に環境負荷を軽減できるのかは不透明です。
研究者の一人であるランカスター大学のマイク・ハザス氏は、企業が運用しているサーバーの多くが秘密であり、データセンターの内部がどのように機能しているのかは正確にはわからないと説明し、「それらをモデル化するのは難しい」と述べています。
今後、エネルギー効率をさらに高める技術が登場したとしても、ストリーミングによる環境負荷が減る保証はありません。
ハザス氏は、ゲームのストリーミングには問題点があるとする一方で、現在の人気タイトルには100ギガを超える容量のものもあるため、消費される電力を考えるならば、「ダウンロードするよりも、ストリーミングのほうが良いかもしれない」と話しています。

各企業は自社のクラウドサーバーが高いエネルギー効率をもっていると主張している……

世界中の人がストリーミングでゲームをプレイしたら、サーバーが出す熱はものすごいだろうね
References: BBC