2020年のホリデーシーズンに発売されるソニーとマイクロソフトの新型ゲーム機への期待が高まりつつある中、Xbox Game Studiosの責任者であるマット・ブーティー(Matt Booty)氏が、Xbox Game PassがXboxを変革しつつある現状について語っています。
ブーティー氏はロンドンで開催されたイベント「X019」に触れ、多くのゲームがクリスマスから2020年初頭にかけてさらに明らかにされるとして、そのラインナップに自信をのぞかせました。
しかしブーティー氏は来年発売される新型Xbox、「Xbox Scarlett(スカーレット)」については多くを語らず、代わりにサブスクリプションサービスである「Xbox Game pass」がXbox全体に与えている影響について解説しました。
Xbox Game Passは開発資金の問題解決と顧客の獲得に貢献する
Xbox Game Studiosの責任者であるマット・ブーティー氏はgamesindustry.bizとの会話の中で、Xbox Game PassがXbox全体に良い影響を与え、その傾向がこの先も続くだろうという見通しを示しています。
最初にブーティー氏は、最近立て続けに行われた開発会社の買収について触れ、それがGame Passのラインナップの強化とユーザーの獲得、そして開発会社に利点を提供するという複数の意味合いを持った重要な選択であったと述べます。
特に開発会社の利点については、昨今のゲーム開発費の高騰がもたらすDLCやライブサービスといった、利益を得るための継続的な活動の軽減につながる、として大きく評価しています。
現在AAAクラスのゲームの開発費は、平均的な小売価格である60ドルでは到底賄えないほど巨大になっており、多くのゲームは発売後もコンテンツを供給し続けなければならない状況になっています。
ブーティー氏は、Game Passには開発会社の商業的圧力を軽減する力があると述べます。
Game Pass自体がサービスとプラットフォームであるため、ゲームを設計するときにそれを維持するための3~4年に及ぶ計画を考える必要はありません。
ブーティー氏は、数週間後ごとに新たなコンテンツを導入している「Fortnite」のようなスタイルに開発者は固執する必要がなくなり、自分たちにとってベストなゲームを作れることがGame Passの大きな利点であると強調しました。
またGame Passのラインナップの多さは、開発会社が新たな顧客を得るチャンスにもなります。
ブーティー氏は「FTUE」(the first time user experience)、つまり、“初めてそのゲームをプレイする人のことを考慮したゲーム作り”をするよう開発者に求めていることを明かしています。
氏は例として、20年以上の歴史がある「Age of Empires(エイジ・オブ・エンパイア)」を挙げ、ずっと親しんできた人にだけ焦点を絞ったゲームにすると、新しく興味を持った人の入る余地がなくなる可能性があるとし、長く続くシリーズであっても――例えば最近発売された「GEARS 5」のように――初心者にわかりやすいチュートリアルを提供すべきだと語っています。
© 2019 Microsoft
Age of Empiresは毎年新たな機能が追加されており、仮に以前プレイしていた人であっても、今のバージョンを理解するためには少なくない時間を要します。
もしGame Passに入っているゲームに興味を持ったプレイヤーが、Age of Empiresのようなゲームに触れた場合、面白さがわかる前にやめてしまうことも考えられます。
Xbox Game Passではそうしたことが起こらないよう、開発者に「FTUE」を意識した作品作りをするよう促しています。
高い品質のゲームを途切れることなく提供する
Xbox Game Passが成功するためには、ゲームの数だけでなく、その品質にも一定の水準が求められます。
ブーティー氏は、マイクロソフトが数々のスタジオを買収したのは、Game Passに提供されるゲームをテンポよく更新し続けるためだとしましたが、そこに低品質の作品が混じることを望んではいません。
ブーティー氏は品質とキュレーションがカギだと述べます。
Game Passが中途半端なゲームや低品質のゲームの集まる場所になってほしくはありません。過去のXbox Game Studiosから出たゲームのいくつかが、望むほどの品質レベルに達していなかったことを考えると、私たちは当面、ゲームの品質を向上させることに注力すべきです。
マイクロソフトがGame Passを次世代機以上に重要視しているのは、「X019」で(Scarlett向けでない)新たなIPを発表したことから伺うことができます。
(※Obsidian Entertainmentの「Grounded」と、Rareの「Everwild」の2つ。いずれも発売後すぐにGame Passに加わります)
Obsidian Entertainment「Grounded」 © Microsoft 2019
Rare「Everwild」 © Microsoft 2019
通常新しいハードの発売には耳目を集めるビッグタイトルを用意するものですが、それをせず新たなゲームをGame Passのラインナップに加えたことは、Xboxを取り巻くビジネスにおいてGame Passが重要な役割を担っていることの証です。
ブーティー氏は、来年登場する新型XboxのためにGame Passに加わるゲームを制限することはないと述べます。
Scarlettが発売されても、Xbox OneやXbox One Xで同じゲームをプレイすることができます。
同氏は新しいデバイスが発売されたからといってそれまでのデバイスが排除されることにはならないと述べ、コンテンツを供給するパイプラインには自信があり、新ハードのためにゲームをとっておく必要がないことを改めて強調しました。
「X019」では、Scarlettの発売を目前にしながらも2つの新たなIPが発表されました。
またGame Passに新たに加わる数多くのタイトルも発表されています。
Xbox Game Pass – X019 – Announcing New Games
新ハードの発売前は新しいゲームが発売されない傾向にありますが、Xbox Scarlettには下位互換があるため、新IPであっても出し惜しみする必要がありません。
ブーティー氏の会話からは、むしろ早く発売しGame Passのラインナップに加えることで、開発者とユーザー双方に利益をもたらすと同時に、Game Passというサービスをより魅力的なものにしようとする考えが見て取れます。
マイクロソフトは、ゲームを取り巻く市場の変化に柔軟に対応するべく様々な手を打ち始めています。
Xbox Game Passは、プレイヤーをこれまで触ることのなかったジャンルに導き、また開発者がベストを尽くせる環境としてこれからますます注目されていくことでしょう。
新作ゲームもすぐにラインナップに加わるなんて太っ腹!
月額1,000円ちょっとなら入りやすい値段だね~♪
浮かれているところでアレですが……日本でのサービス開始予定は未定なのです……
References:gamesindustry.biz