カナダの考古学者は、ヨルダンの遺跡の発掘調査から、世界最古とみられるチェスの道具を発見しています。
チェスは古くから遊ばれてきたボードゲームで、そのルーツは紀元前にまで遡ります。
現在の形に統一される前は様々なルールで遊ばれ、各地の盤や駒にはそれぞれ特徴がありました。
発見された道具が本物であれば、チェスの歴史に新たな1ページが加わります。
ヨルダンで見つかった世界最古のルーク
カナダのビクトリア大学の考古学者チームは1991年、ヨルダンの遺跡「フマイマ」で、チェスの駒の一つ「ルーク」に似た石片を発見しました。
年代測定からこのルークが作られたのは、およそ1300年前であり、既知の最も古いチェスの駒よりもさらに100年古いものであることが明らかになりました。
フマイマは当時の交易の重要地点で、チェスの前身とされる遊び「チャトランガ」の発祥地であるインドと、西方を結ぶルート上にありました。
各地から商人が集まるフマイマは、何百年にもわたって繁栄し、独自の文化が花開きました。
現在この場所にはイスラム教のモスクをはじめ、ビザンチン教会やローマ時代の砦など数多くの文化遺産が残されています。
発見されたルークのような石片 (Credit:
発見されたルークとされる石片は抜けた歯のような形状で、とてもチェスの駒のようには見えません。
現在のチェスのルークは、塔や城の形をしているのが一般的です。
しかしチェスは歴史上、何度もルールや駒の形が変化してきました。
古い時代のルークは戦車をかたどっており、今回発見されたルークもおそらくは同じ種類のものと考えられます。
発掘調査を行ったビクトリア大学のジョン・オレソン氏は、「チェスは西暦643年にはイスラム教のテキストに言及がみられ、当時のイスラム世界では人気の遊びだった」と説明し、フマイマの交易上の重要性から、「この場所にチェスという遊びが伝わったのは自然なことである」と述べています。
石片が実際にチェスの駒であるかどうかは、今後のさらなる分析が必要です。
オレソン氏は、フマイマがアッバース朝を開いた一族の本拠地であり、当時大きな権力を持っていた点を指摘し、チェスが持ち込まれた理由について、「他国に対する情報収集活動の結果だったのではないか」と推測しています。
石片が最古のルークであった場合、オークション市場がざわめく可能性があります。
チェスの駒はコレクションアイテムであり、古いものは高値で取引されます。
今年の7月には、1831年にスコットランドで発見された有名なチェスセット「ルイス島のチェス駒 (Lewis Chessmen)」のピースの一つ、「ルイス・ウォーダー (Lewis Warder)」がオークションにかけられ、929,000ドルで落札されました。
「ルイス島のチェス駒」の制作年代は12世紀頃と推定されています。
フマイマの石片はこれよりもさらに古く、本物であれば高値がつくのは間違いありません。
ただの石のようにも見えるが……
チェスじゃなかったとしても何かの遊びには使われてたんじゃないかな
Reference: LiveScience