魔の海域「バミューダトライアングル」 想像力によって生み出された超常現象の真実

歴史
(NOAA's National Ocean Service/CC BY 2.0)

通過した飛行機や船舶が跡形もなく消えてしまうという魔の海域「バミューダトライアングル」は、多くの映画、本、ドキュメンタリーの題材となってきました。

人々は科学をもってしても解明できない現象に魅了され、今やバミューダトライアングルは超常現象の代名詞となっています。

 

フロリダ半島の先端とバミューダ諸島、そしてプエルトリコを結んだ三角形の海域とその上空には、現在でも数えきれないほどの人工物が通過しています。

ここ最近の海はとても静かなようで、バミューダトライアングルの危険性がメディアに取り上げられる機会は少なくなりました。

これは、海域に潜む悪魔がどこかに消えてしまったのが理由でしょうか?

それともバミューダトライアングルは、元々超常現象など起こる場所ではないのでしょうか?

 

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バミューダトライアングルという言葉は一人の作家が生み出したもの

 

「バミューダトライアングル」という言葉は、1964年、アメリカの作家ヴィンセント・ガディスが、雑誌「アーゴシー」に掲載した文章のなかで初めて登場しました。

超常現象に関する物語を多く書き残したガディスは、バミューダトライアングルを「悪魔の三角形」と形容し、この海域では、多くの航空機や船舶が行方不明になっていると説明しました。

ガディスが生み出した「バミューダトライアングル」という言葉とその内容については、当時から科学的ではないとして批判が挙がっていました。

しかしバミューダトライアングルはその後も人々の好奇心を引き付け、数々の作品と、まことしやかな噂を生み出しました。

 

ガディスが、この海域と超常現象を結びつけるようになったのは、過去に起こった事故がヒントになっています。

 

バミューダトライアングルと超常現象が結びつくきっかけになった事故

 

事故にあったのと同じ機体「TBF-1 アベンジャー」  (Grumman TBF-1 Avenger/Public Domain)

 

1945年12月5日、アメリカ海軍の5機の飛行機と14人のパイロットがフロリダ沖で行方不明になりました。

2500時間以上の飛行経験をもつ28歳の教官チャールズ・テイラー中尉と13人の訓練生は、「どこにいるのかわからない」、「緑の水が見える」などの無線を送った後に消息を絶ちました。

フォートローダーデールの基地は、すぐに救助機「PBMマリナー」を向かわせます。

しかしこちらも、13人の搭乗員ととも行方不明になりました。

その後事故は海軍によって調査が行われますが、最終的に「原因不明」として処理されました。

 

この一連の事故と調査結果は、ガディスを始め、多くの人たちの想像力に火をつけました。

バミューダトライアングルでは、80年代半ばまでに、25機の小型機が行方不明になる事故が起きています。

これらのいずれも残骸が回収されておらず、人々はますますバミューダトライアングルの超自然的な力を信じるようになりました。

一部の人はバミューダトライアングルを、失われた都市「アトランティス」や陰謀論などと結び付けました。

 

最初の事故をきっかけに肥大化していったバミューダトライアングルに対するミステリアスなイメージは、現代にも引き継がれています。

しかし過去に起こった事故は、超常現象の存在を示す証拠にはなりません。

 

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バミューダトライアングルは超常現象が起きる場所ではない

 

訓練生を従えてフロリダ沖に飛び立った教官のテイラーは、その後の調査で、当初の予定とは違う場所を飛んでいたことが明らかになっています。

当日の天候は悪く、海は荒れており、事故は視界不良によって起きました。

 

また海軍は事故の原因を「不明」としていますが、これには裏事情がありました。

当初事故の原因は、テイラーの「異常な行動」によるものだとされていました。

しかしテイラーの母親はこれに抗議し、息子の名誉を守るために独自の調査を行い、その結果を海軍に提出しました。

機体の一部でさえ回収できていない海軍は、テイラー一人に責任を負わせたという非難を避けるため、最終的に、「事故が起きた原因はわからない」とする結論に修正しました。

 

海域で事故機が発見されなかったのも不思議なことではありません。

当時の機体は、現代の航空機ほど浮力がなく、最短45秒で沈んでしまう設計でした。

またバミューダトライアングルであろうとなかろうと、海に墜落した航空機が見つかる可能性は極めて低いものです。

2014年に起きたマレーシア航空MH370便の行方不明事故では、現在に至るまで機体の一部しか発見されていません。

 

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バミューダトライアングルを危険な海域と捉える傾向は、墜落した機体が見つからないことと大きな関係があります。

アメリカでは、1940年代半ばから80年代半ばにかけて、バミューダトライアングルで起きた件数よりも多くの墜落事故が発生しています。

しかしこれらは全て地上で残骸が見つかっているため、事故の原因を超常現象と結びつける人はいませんでした。

また航空機事故は他の海域でも起こっており、バミューダトライアングルでの事故の件数がそれらと比べて特別多いわけでもありません。

 

全ての結果は、バミューダトライアングルの超常現象が作られたものであり、真実ではないことを示しています。

 


 

 

せつな
せつな

バミューダトライアングルの超常現象は、宇宙人説とかブラックホール説とかトンデモ系がたくさんある……

しぐれ
しぐれ

悲惨な事故が元だと考えると複雑な気持ちになるね

 

Reference: The Conversation