現代版ノアの箱舟「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」に温暖化の影が忍び寄る

ノルウェーにある「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」は地球上に存在する種子を保存するために建設された種子銀行です。

2008年にビル・ゲイツ主導のもとで作られた施設は、気候変動や自然災害、核戦争などによって農作物の種子が絶滅するのを防ぐために作られていて、最大300万種の種子を保存することが可能な“現代版ノアの箱舟”と呼ばれています。

現時点で約100万種の種子が保存されている貯蔵庫はノルウェーの永久凍土に埋め込まれ、マイナス18~20度という低温を永久的に維持できるよう設計されています。

 

未曾有の災害はいつやってくるかわからないのでこうした事前の準備は種の保存や再生に役立ちます。

しかし最近の報告によると、気候変動がこの地域にも深刻な影響を及ぼし始めています。

「Doomsday Vault(終末のための貯蔵庫)」とも呼ばれるスヴァールバル世界種子貯蔵庫は、気候変動によってその機能を脅かされています。

スポンサーリンク

 

温暖化による気温上昇が永久凍土を溶かす

 

近年の温度上昇は、不滅であると信じられていたノルウェーの永久凍土も溶かし始めています。

貯蔵庫のあるスヴァールバル諸島は人間が生活している地域の最も北に位置していることで知られていますが、最近では氷河が溶けて雪崩が発生したり、貯蔵庫のある場所で氷の融解が起きトンネル内に水が流れ込んだりしています。

これらは永久に種子を保存することを謳った貯蔵庫に対する信頼を失いかねない問題です。

 

ノルウェーの気候サービスセンターは今年、スヴァールバル諸島の気温が1971年から2017年にかけて3~5度上昇したと報告しています。

スヴァールバル諸島の平均気温はマイナス8.7度です。

ノルウェー気象学研究所のInger Hanssen-Bauer氏は「この地域の温暖化は過去50年で非常に速くなっている」と述べます。

Bauer氏も作成に加わった先の報告書では、スヴァールバル諸島の氷河が融解し縮小していることが確認されています。

 

報告書に関わった科学者たちは「気候変動に関する政府間パネル」が定めた地球温暖化のシナリオに基づき、2100年までの気温の変化を予測しています。

それによると最悪の場合は約10度、中程度の影響でも約7度気温が上昇することが示されました。

もしこの規模の温度変化が実際に起こると、ノルウェーだけでなく世界規模で環境に大きな変化をもたらします。

温暖化によって大雨が増え、雪崩や土石流が頻繁に起こります。

そして気温の上昇により雪の降る期間が短くなり、それはすなわち永久凍土の埋められている貯蔵庫にも影響を及ぼすことになります。

報告書は最悪のシナリオを提示してみせましたが、気候システムの感度や気候変動に関する不十分な知識、そして気候モデルの限界があるとし、正確に予測することは難しいとも付け加えています。

 

報告書が示すように7~10度も気温が上昇すれば永久凍土は溶け、貯蔵庫が目的とする低温での種子の保存は難しくなります。

まだかなり先のことのようにも思われますが、温暖化の影響は安心できるほどゆっくりでもありません。

 

北極圏の地表は他の地域と比べて2倍の速度で温まっている

 

ロングイェールビーンの町 Photo by Longyearbyen main street – Wikipedia

 

スヴァールバル諸島にあるロングイェールビーンは、地球上で人が住む最も北に位置した町です。

ここは北極圏に向かう探検家や科学者たちにとっての中心地であり、気候変動による影響が最もよく現れる地域の一つでもあります。

CNNによるとロングイェールビーンでは2015年の雪崩で2人が死亡し9人が負傷しました。

これらは二酸化炭素の排出による気温上昇が原因であり、この傾向が続く限りこれからも雪崩の頻度は衰えないと考えられています。

 

北極圏は気候変動の影響を非常に受けやすく、2018年にアメリカ海洋大気庁(NOAA)は、北極圏の大気と海洋の継続的な温暖化は予想外の方法で環境システムに変化を起こしていると報告しました。

NOAAは、北極圏での地表気温が地球の他の場所に比べて2倍の速度で温まっていることも明らかにしています。

 

 

 


 

温暖化は地球規模で取り組むべき大きな問題です。

いざというときに貯蔵庫の種子が全て枯れていた……なんてことにならないよう皆で協力していきたいものです。

 

 

References:TheWashingtonPost

自然
スポンサーリンク
しぐれをフォローする
しぐれちゃんねる

コメント