ロックスター・ノースがビデオゲームの減税制度を使い法人税の支払いを回避、これまでに受けた控除額は114億円

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Ⓒ Rockstar Games.

英国の税に関する調査を行うシンクタンクTax Watch UKは、「Grand Theft Auto」シリーズの開発で知られるロックスター・ノースが、2014年から導入されたビデオゲームの減税制度を使い、2019年だけで3,760万ポンド(約53億円)を受け取ったとする報告書をまとめました。

Tax Watch UKはロックスター・ノースが制度のスタート以来、合計で8,000万ポンド(約114億円)もの控除を受け、過去4年間法人税を払っていないと明かし、「これはビデオゲームの税金救済制度を改革しなければならないことを示す証拠である」と述べ、現在の制度のあり方について疑問を投げかけました。

 

2014年に導入された、イギリスのゲーム開発者を支援するために作られた減税制度VGTR(Video Games Tax Relief)は、ゲーム制作費用のうち最大20%までの減税措置を受けることができ、毎年多くの企業がイギリス政府に税金の払い戻しを請求しています。

この制度の利用にはいくつかの条件があり、民間資金を見つけるのが困難な小規模の開発者であることや、イギリスに拠点を置き、イギリスの文化的な背景を持ったゲームを作ることなどが求められます。

しかしVGTRは当初対象としていた小規模の開発者ではなく、大規模ないくつかの企業によって独占的に利用されています。

彼らはイギリスに子会社を置くことで条件の一つを回避し、登場人物にイギリスの公用語である英語を喋らせることでもう一つの条件もクリアしていると主張します。

政府はVGTRの予算として年間3,500万ポンドを見積もっていましたが、現在この制度で控除されている税金の総額は年間1億ポンド(約143億円)を越えています。

このうちの約半分は、ビデオゲーム業界の最大手である4つの企業、ロックスター・ゲームス(Take-Two Interactive)、ワーナーメディア、ソニー、セガによって利用されています。

 

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ロックスター・ノースの2019年の控除額は制度全体の37%を占める

 

Tax Watch UKによる調査では、2019年にVGTRに申請された税控除345件のうち315件は100万ポンド未満の請求で、その合計は約3,000万ポンドでした。

一方ロックスター・ノースが請求した額は3,760万ポンドであり、残りの29件の申請額3,540万ポンドよりも大きいものでした。

ロックスター・ノースが全ての控除額に占める割合は、2018年の18%から37%に上昇しています。

これについてTax Watch UKは、税金控除の請求を開発中でも行うことができる点に触れ、ロックスター・ノースの請求額の増加は、現在制作しているであろう「Grand Theft Auto 6」に関連したものであり、その製作費は前作「GTA 5」に費やされた1億3,700万ドル(約196億円)をはるかに上回るものになる可能性があると述べています。

 

ロックスター・ノースを擁するロックスター・ゲームスは、税の優遇制度を“悪用”しているとする意見に対し声明を発表しています。

ロックスター・ゲームスの広報担当者はゲームメディアVG247に、「減税制度を利用することにより、イギリスで1,000人以上の雇用を創出することができた」と語り、「この制度がイギリスの経済と税収に大きく貢献するだけでなく、将来にわたってイギリスをビデオゲーム開発の最善線の地位にするのに役立つ」と強調しました。

なおイギリスで法人税を払っていないことについては回答が得られていません。

 


 

VGTRの予算はイギリスの納税者から出ているため、資金繰りに余裕のある企業や、イギリス的な文脈を持たない作品をつくる会社などが制度を利用することに対しては、少なくない反発があります。

「GTA 5」は2013年にリリースされて以降、60億ドル(約6,600億円)の売り上げがあるとされていますが、ロックスター・ノースは2018年に引き続き2019年もVGTRを利用しました。

これはロックスター・ノースが法人税を支払っていないことを意味しています。

Tax Watch UKのアレックス・ダナガン氏は、「VGTRの減税制度は、ワーナーメディア、ソニー、セガなどの多国籍企業にとって、イギリスの納税者から補助金を引き出すためのドル箱になっている」と述べ、これらの企業はそもそも減税を受ける必要のない立場であると指摘しています。

(関連記事: 悪用?それとも有効利用?イギリスの減税制度を巧みに使うゲーム業界の多国籍企業)

 


 

 

かなで
かなで

面白いゲームができるならどの企業が制度を利用してもいい気がするけどねー

せつな
せつな

イギリスの納税者からしたら、自国以外に本拠を持つ企業にはお金を使ってほしくないのが本音かもしれない……

 

Source: Tax Watch UK